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がんの悪化を主導するマクロファージの源「ヒト共通単球前駆細胞」発見-東京医歯大

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2017年05月19日 PM01:00

不明だった単球のみを作る源となる細胞

東京医科歯科大学は5月10日、ヒト単球のみを生み出す源の細胞を発見したと発表した。この研究は、同大難治疾患研究所・生体防御学の樗木俊聡教授らの研究グループによるもの。研究成果は、国際科学誌「Immunity」オンライン速報版に5月16日付けで掲載されている。


画像はリリースより

単球は、生後に骨髄で作られ、がんの発生や炎症に伴い血液から当該組織に入り込み、マクロファージに分化する。単球由来マクロファージは、がん組織ではがん細胞の増殖・浸潤を促進し、炎症性腸疾患では炎症を惹起して病態を増悪させる。

一方、ヒトの単球がどの様な細胞から作られるのか、単球のみを作る源になる細胞が存在するのかなど、多くの点が未解明だった。当該の細胞を起点とした単球分化経路が明らかになれば、がんや難治性炎症疾患の治療法の開発につながるため、その同定が急がれていた。

ヒト共通単球前駆細胞を標的とした治療薬の探索進める

研究グループは、ヒト単球の分化経路を明らかにするため、臍帯血または骨髄細胞を用いて、さまざまな表面分子のスクリーニングを実施。ヒト単球に高発現するCD64とCLEC12Aに着目したという。ヒト臍帯血や骨髄中には、顆粒球と単球への分化能を併せ持つgranulocyte and monocyte progenitor()という前駆細胞が報告されていたが、今回、研究グループはこのGMPがCD64とCLEC12Aの発現レベルによって4つの亜集団に分かれることを発見。そして、各分画の分化能を解析したところ、CLEC12AhiCD64hi分画は単球のみに、CLEC12AhiCD64int分画は単球と顆粒球に分化した。これら2分画はリンパ球への分化能を完全に欠落していることも確認。残り2つの分画は雑多な前駆細胞の集合体だったという。

これらの結果から、CLEC12AhiCD64hi分画が単球のみを数多く産生する前駆細胞と結論付け、ヒト共通単球前駆細胞(humancommon monocyte progenitor、cMoP)と定義。これまでGMPと定義されていた前駆細胞は、CD64とCLEC12Aの発現パターンによって細分化できる複数の前駆細胞の集合体であることが判明した。研究グループは、その中のひとつがヒト単球のみを多く産み出すcMoPであることを証明したとしている。

ヒトcMoPは多くの単球を作り出し、単球はがん組織で腫瘍関連マクロファージ、炎症性腸疾患で炎症惹起マクロファージ、骨疾患で破骨細胞に各々分化することが予想される。研究グループは現在、製薬企業との共同研究により、ヒトcMoPを標的とした治療薬の探索を進めており、がんや難治性炎症疾患の治療への応用が期待されるとしている。

 

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