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ブルガダ症候群における突然死の予測、SCN5A遺伝子検査の有用性を報告-国循ら

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2017年04月21日 PM01:45

心臓突然死「」の原因のひとつ

国立循環器病研究センターは4月19日、青壮年男性が夜間に突然死する「ポックリ病」の原因のひとつであるブルガダ症候群の突然死予測におけるSCN5A遺伝子変異の検査の重要性を世界で初めて報告した。この研究は、日本医科大学の清水渉大学院教授、国立循環器病研究センターの相庭武司医長ら多施設合同研究グループによるもの。研究成果は、米国心臓病学会誌「Circulation」オンライン版に3月24日付で掲載されている。


画像はリリースより

ブルガダ症候群は、心電図のST波が上昇する特徴的な波形を示す疾患。多くの場合は無症状だが、一部の症例で致死性の不整脈である心室細動を発症し、突然死の原因となる。日本などアジアでは全人口の0.05~0.2%の割合で発症し、男女比は9:1程度とされる。

ブルガダ症候群のうち、遺伝子異常を認めるのは全体の15~30%であり、そのほとんどが心臓のナトリウム・イオンチャネルの電気信号を調整する遺伝子であるSCN5A遺伝子の異常。しかし、これまで日本人のブルガダ症候群症例において、SCN5A変異の有無が将来の致死性不整脈イベントの発症にどのような影響を与えるかは、十分に検討されていなかった。

致死性不整脈イベントの有意な予測因子として期待

今回の研究では、日本国内の14施設において、SCN5Aの変異の有無を調べた415例のブルガダ症候群発端者を対象に、SCN5A変異の有無により致死性不整脈の発症に差異がみられるか前向きに長期追跡調査を行った。

その結果、415例中、60例(14%)にSCN5A変異を認め、355症例(86%)にはSCN5A変異を認めなかった。平均追跡期間72か月間にSCN5A群では13例(22%)、非SCN5A群では49例(14%)で致死性不整脈が起った。両群の生存曲線を比較したところ、SCN5A群で有意に致死性不整脈が多く発症していたという。また多変量解析により、SCN5A変異を有することが致死性不整脈イベントの有意な予測因子であることが判明した。

さらに、変異の部位がナトリウムイオンの通り道である「中心孔領域」にある症例では、より致死性不整脈イベントが多く、逆にSCN5A変異を有していても、中心孔領域以外の部位に変異がある心室細動・心停止既往のない症例では、致死性不整脈イベントが少ないことがわかったという。

ブルガダ症候群による突然死は、植込み型除細動器()により、多くの場合回避できるが、ICD植込みを検討するための明確な指標はこれまでなかった。今回の研究により、ICDを植え込むべき症例を検討する際の有用なエビデンスが示された、と研究グループは述べている。

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