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脳内物質「バソプレシン」産生の神経細胞が体内時計の周期を決定-金沢大

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2016年09月16日 PM02:30

どのタイプの神経細胞が体内時計の周期を決めるのかを研究

金沢大学は9月13日、脳内物質「バソプレシン」を産生する神経細胞が体内時計の周期(1日の長さ)を決めることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大学医薬保健研究域医学系の三枝理博准教授らと理化学研究所の研究グループによるもの。研究成果は米科学雑誌「Current Biology」のオンライン版に8月25日付けで掲載されている。


画像はリリースより

ヒトのほぼ全ての身体機能は体内時計により調節される。視交叉上核は約2万個の神経細胞でできており、この神経細胞群は均一な集団ではなく、性質の異なる複数のタイプの神経細胞から成り立っている。多くの神経細胞がネットワークを形成して互いにコミュニケーションを取り合い、視交叉上核全体として時刻情報を全身に送る。

これまでにも、視交叉上核の一部の神経細胞が体内時計の周期を決めているとの報告があったが、報告された神経細胞群はいまだ多くの種類の神経細胞を含んでおり、具体的にどのタイプの神経細胞が体内時計の周期を決めるのかは明らかになっていなかった。

、精神疾患やメタボの治療・改善への応用に期待

今回研究グループは、視交叉上核内に存在する神経細胞のうち「バソプレシン」という物質を産生する神経細胞が体内時計の周期を決めることを世界で初めて突き止めた。バソプレシン産生神経細胞が生み出すリズムの周期を遺伝子操作により長くすると、体内時計により制御されるマウスの行動リズムの周期も約1時間長くなった。逆にバソプレシン産生神経細胞のリズムの周期を短くすると、行動リズムの周期も約30分短くなったとしている。

体内時計の周期が24時間から大きく外れると、外界の昼夜サイクル(24時間周期)に合わせることが難しくなる。実際、夜型傾向にある人は、体内時計の周期が長いことが一因と考えられている。一方、時差ボケでは体内時計の時刻が外界の時刻とずれている。歳をとると眠りが浅くなるのは、体内時計の刻みが弱い(振幅が小さい)ためと考えられる。

体内時計の周期、位相、振幅、それぞれがどのように制御されているのか、そのメカニズムを正確に理解することで、睡眠障害、精神疾患やメタボリックシンドロームなど、生活リズムの乱れに関連するさまざまな疾患・健康障害の治療・改善に応用することが期待される、と研究グループは述べている。

 

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