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北大 正常上皮細胞ががん細胞を駆逐する分子メカニズムを解明

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2014年08月07日 PM03:30

正常上皮細胞内のタンパク質、フィラミンとビメンチンが関与

北海道大学は8月1日、同大学遺伝子病制御研究所の藤田恭之氏らの研究グループが、初期がん細胞に隣接する正常上皮細胞内において、フィラミンとビメンチンという細胞骨格タンパク質が、がん細胞を積極的に排除する分子メカニズムを世界で初めて解明したと発表した。


画像はwikiメディアより引用

正常上皮細胞が免疫細胞を介さない抗腫瘍能を有していることを示した点でも、これまでにない研究成果であり、注目を集めるものとなっている。この研究論文は、英国の「Nature Communications」に7月31日付で掲載されている。

同グループはこれまでの研究で、上皮細胞層のひとつの細胞にがん原性変異が生じた際、新たに生じた変異細胞と隣接する正常細胞の間に相互作用が発生し、変異細胞が上皮細胞層から逸脱する現象が起こることを確認していた。だが、変異細胞の周囲の正常細胞が、こうした変異細胞の排除現象にどのように関わっているのかは不明なままだった。

哺乳類培養細胞とゼブラフィッシュを用いた生化学的スクリーニングで同定

そこで今回研究グループは、哺乳類培養細胞とゼブラフィッシュを用い、正常上皮細胞と変異細胞の境界で特異的に機能している分子を探索しようと、生化学的スクリーニングを実施したという。その結果、細胞骨格タンパク質のフィラミンとビメンチンの同定に成功。さらなる解析を重ね、これらのタンパク質が変異細胞の周囲の正常上皮細胞内で、変異細胞を取り囲むように集積していることを突き止めた。

そして、正常細胞がこれらのタンパク質を用いて、変異細胞を上皮細胞層から押し出すように、積極的に排除していることが明らかとなった。ここから正常上皮細胞が免疫細胞を介さない抗腫瘍能を有しているという新規概念も導き出されたという。同研究グループではこの現象を、上皮組織が持つがんに対するディフェンス能力の発揮とみて、EDAC(Epithelial Defense Against Cancer)と呼ぶことを提唱している。

同研究グループでは、今回得られた新たな知見を生かすことにより、今後は隣接する正常な細胞にがん細胞を攻撃させるという、新たながん予防、および治療薬の開発が期待できるとしている。(紫音 裕)

▼外部リンク
北海道大学 プレスリリース

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