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東京医科歯科大と秋田大学の研究グループ 過剰な免疫反応を抑制する仕組みを発見

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2013年09月26日 PM03:08

激しい免疫反応を抑制する仕組みが必要

東京医科歯科大学 難治疾患研究所と秋田大学 大学院医学系研究科の共同研究グループは、過剰な免疫反応を抑制する樹状細胞の新たな働きを発見したと発表した。

(画像はプレスリリースより)

この研究成果は、科学技術振興機構のJST課題達成型基礎研究の一環として得られたものであり、9月12日付で米国科学誌「Immunity」のオンライン速報版に公開されている。

感染や炎症が起こると、樹状細胞は病原体をセンサーで認識し、獲得免疫系を活性化して排除するが、活性化されたサイトカインやキラーT細胞は防衛すると同時に組織を傷害する。よって、免疫反応には病原体排除と組織傷害のバランスを調節する仕組みが必要不可欠だが、その調節機構の詳細は明らかではなかった。

ヒト血球貪食症候群の血球貪食

激しい炎症では、貪食細胞による血球細胞の貪食が起こる。ヒト血球貪食症候群は、先天的な原因で発症する一次性と感染症や自己免疫疾患に付随する二次性に分かれ、発症すると免疫細胞の暴走、大量のサイトカインの産生、貪食細胞による赤血球や白血球の貪食が現れ、重篤な場合は死に至る。   

研究グループは、炎症時の貪食の仕組みを明らかにするため、マウス血球貪食症候群モデルを用いて血球貪食を観察した。その結果、激しい炎症や重篤な感染症の場合、単球から誘導される樹状細胞がアポトーシスを起こした赤血球系細胞を貪食することで、免疫抑制性サイトカインを産生し、過剰な免疫反応による組織傷害を抑制して個体の死を回避することがわかったという。

樹状細胞による血球貪食とは、過剰な免疫反応を抑制する仕組みであり、血球貪食の新たな免疫寛容システムであることが明らかになった。また、炎症状態の抑制で自らの死を防ぐ代わりに病原体の排除を見送る仕組みは、宿主と病原体間の共生戦略ともとれる。今後、血球貪食が炎症抑制反応のバイオマーカーになり、過剰な免疫反応を伴う感染症・自己免疫病の診断、樹状細胞を用いた治療法につながることが期待されるとしている。(馬野鈴草)

▼外部リンク

科学技術振興機構 プレスリリース(東京医科歯科大学、秋田大学との共同発表)
http://www.jst.go.jp/

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