医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > パーキンソン病やレビー小体型認知症の病因に不飽和脂肪酸の代謝異常が関与-千葉大

パーキンソン病やレビー小体型認知症の病因に不飽和脂肪酸の代謝異常が関与-千葉大

読了時間:約 1分22秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2018年05月10日 PM12:15

αシヌクレニンの凝集沈着が特徴的な神経変性疾患

千葉大学は5月7日、(PD)やレビー小体型認知症(DLB)の病因に、不飽和脂肪酸の代謝に関わる可溶性エポキシド加水分解酵素の異常が関与していることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大社会精神保健教育研究センターの橋本謙二教授、任乾特任助教らの研究グループによるもの。研究成果は「米国科学アカデミー紀要」に掲載されている。

PDやDLBは、タンパク質であるαシヌクレニンの凝集沈着が特徴的な神経変性疾患で、その病因は明らかにされていない。今回研究グループは、酵素阻害薬(TPPU)と遺伝子欠損マウスを用いて、これらの疾患の病因に可溶性エポキシド加水分解酵素が重要な役割を果たしていることを明らかにしたという。

TPPU投与でドパミン神経系の脱落を予防

TPPUの投与は、PDモデルマウスのドパミン神経系の脱落を予防。また、遺伝子欠損マウスは、PDモデルにおけるドパミン神経系の脱落を示さなかったとしている。また、PDのモデル動物およびDLB患者の死後脳を用いた研究から、可溶性エポキシド加水分解酵素のタンパク発現がモデル動物の脳組織やDLB患者の死後脳組織で増加していることがわかったという。この酵素の発現とαシヌクレニンのリン酸化の間に正の相関があり、αシヌクレニンのリン酸化の亢進と、この酵素の増加に関連があることが示唆された。さらに、家族性PD(PARKIN遺伝子変異)患者由来のiPS細胞から誘導したドパミン神経細胞に対してTPPUを培地中に添加することにより、ドパミン神経系の神経障害を予防し、正常細胞と同程度まで回復させたという。

可溶性エポキシド加水分解酵素は、アラキドン酸、、DHAなどの不飽和脂肪酸の代謝系におけるエポキシ脂肪酸の加水分解に関わる重要な酵素であり、近年注目されている。神経変性疾患の脳では、可溶性エポキシド加水分解酵素が増加することにより、αシヌクレニンの凝集・沈着により、神経脱落に繋がっているものと推測されるという。今回の研究成果は、αシヌクレニンの凝集・沈着が関与する神経変性疾患の新しい予防薬・治療薬になるものと期待される、と研究グループは述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • OTULIN関連自己炎症症候群の常染色体顕性遺伝形式発症を確認、世界初-横浜市大ほか
  • 膵がん、線維化形成に関与するタンパク質ROCK2を同定-岡山大ほか
  • EYS関連網膜色素変性に視細胞変性への光暴露が関与、ヒトiPS細胞で解明-理研ほか
  • NGLY1欠損症、オキシトシン治療でモデルマウスのけいれん様症状抑制-理研ほか
  • 汗孔角化症、FDFT1遺伝子のエピゲノム異常が発症に関わることを発見-神戸大ほか