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炎症と腸の再生をつなぐ新しいシグナルを発見、再生医療の新たな標的となる可能性-九大

読了時間:約 1分30秒
2015年03月03日 AM06:00

炎症と腸の再生をつなぐ「gp130-Src/Yes-YAPシグナル」を発見

九州大学は2月26日、同大大学院医学研究院消化器・総合外科学分野の前原喜彦教授、カリフォルニア大学サンディエゴ校の谷口浩二研究員(九州大学大学院医学研究院消化器・総合外科教室員)、マイケル・カリン教授ら研究グループが、炎症と腸の再生をつなぐ新しいシグナル(gp130-Src/Yes-YAPシグナル)を発見したと発表した。


画像はプレスリリースより

多くのがんの発生や進展には、慢性炎症が寄与していることがよく知られており、近年、炎症ががんを促進するメカニズムが次第に明らかになってきていた。一方、組織傷害時には急性炎症が引き起こされ、炎症が創傷の治癒(再生)を促進していることが知られているが、そのメカニズムはよく分かっていなかった。

炎症時には、炎症性サイトカインであるインターロイキン-6(IL-6)や腫瘍壊死因子(TNF)などが免疫細胞などにより大量に産生されることが報告されており、IL-6ファミリーサイトカインは、共通のサイトカイン受容体gp130を介して創傷の治癒を促進すると考えられている。

gp130遺伝子導入マウスは、腸炎による腸上皮細胞の傷害に強くなる

今回の研究では、IL-6-gp130シグナルの腸上皮細胞における役割を明らかにするために、以前から知られていたgp130の恒常的活性化型変異の遺伝子導入マウス(gp130 遺伝子導入マウス)を作製。この遺伝子を腸上皮細胞に特異的に発現するモデルマウスを作製することで、腸上皮細胞が常にIL-6の刺激を受けてgp130が活性化している状態を再現した。

その結果、gp130遺伝子導入マウスでは腸が太くなり、増殖している未熟な腸上皮細胞の増加と分泌細胞の減少がみられたという。また、腸炎による腸上皮細胞の傷害にも強いことがわかり、腸上皮細胞の再生能が高まっていることが示されたとしている。

さらに、腸において従来から知られていた炎症の情報伝達経路であるJAK-STAT3シグナルに加えて、Src/Yes-YAP-NotchシグナルがIL-6-gp130シグナルの下流で活性化されていることを世界で初めて発見したという。

このシグナルは、再生医療やがん治療の新しい標的になる可能性があり、今後に期待が持てると研究グループは述べている。なお、同研究成果は、英科学誌「Nature」の電子版に2月25日付で掲載されている。

▼外部リンク
九州大学 プレスリリース

 

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