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血管内皮細胞と造血幹細胞の共通マーカーが、胎生期の造血発生に重要と判明-阪大

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2019年12月13日 AM11:45

造血幹細胞表面マーカー「」の、胎生期における役割を解析

大阪大学は12月11日、血管内皮・造血幹細胞に共通する表面マーカーESAMが、マウスにおける血液細胞の発生、特に赤血球における成体型ヘモグロビン合成に重要であることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科の横田貴史講師(血液・腫瘍内科学)、同医学部附属病院の上田智朗医員(医師)(血液・腫瘍内科)らの研究グループによるもの。研究成果は、米国科学誌であり幹細胞研究の専門誌である「Stem Cell Reports」に公開されている。


画像はリリースより

造血は、造血幹細胞が一生涯にわたり全ての種類の血液細胞を産生し、全身に供給し続けることで維持される。造血幹細胞は血管内皮細胞と共通の祖先である血管芽細胞から発生し、血管内皮細胞をはじめとする造血環境側の細胞と相互作用しながら造血の恒常性を維持している。造血幹細胞についてはいまだに不明な点が多く、造血幹細胞を同定しようとする試みの中で、これまで造血幹細胞表面マーカーとして多数の分子が報告されてきたが、その機能が解明されたものはごくわずか。特に造血発生に関する報告はほとんどない。

研究グループは以前、マウスの造血幹細胞の表面マーカーとしてESAM(Endothelial cell-selective adhesion molecule)を同定し、ヒトの造血幹細胞にも発現していることを明らかにした。また、抗腫瘍剤を投与すると、赤血球や白血球などの血液細胞が一時的に減少し、その後回復することが知られているが、ESAM欠損成体マウスは、抗腫瘍剤投与後の血球回復が正常に行われないことにより高い確率で死亡することも明らかにしていた。このことから、ESAMは単なる表面マーカーではなく、その機能においても重要な分子と考えられたが、胎生期におけるESAMの役割に関しては、解明されていなかった。

ESAMは胎生期の造血機構の発生、特に成体型ヘモグロビン合成に重要

今回、研究グループは、ESAMの胎生期における機能を明らかにするため、まず、ESAM欠損マウスを解析した。ESAM欠損成体マウスの出生数がメンデル比から推測される数の約半数と少ないことから、胎生期に致死的イベントが発生していると考え解析したところ、ESAM欠損マウスが貧血により胎生後期に高率に死亡することが判明。胎生後期の赤血球造血は主に大動脈周囲組織由来の造血幹細胞によるいわゆる「二次造血(成体型造血)」により行われているため、ESAM欠損により二次造血の発生が障害されていると考えられた。

さらに詳しい解析により、ESAM欠損マウスの胎児の肝臓から分取したESAM欠損造血幹細胞が野生型の造血幹細胞と比較して、成体型ヘモグロビン合成能で劣っていることが明らかになった。また、RNA-sequencingを用いた網羅的遺伝子解析から、ESAM欠損によりヘモグロビン合成関連遺伝子の発現が造血幹細胞レベルで著明に低下することがわかった。ESAMを介した細胞内シグナルを入れると、ヘモグロビン合成に関連する遺伝子群の発現が最も変化していた。これらの知見から、造血幹細胞上のESAMが成体型ヘモグロビン合成に重要であり、ESAMが直接・間接的にヘモグロビン合成に関与する遺伝子の発現調節を行っている可能性が示唆された。

続けて、上記の結果に対する血管内皮細胞のESAMの影響を明らかにするため、造血幹細胞または血管内皮細胞特異的にESAMを欠損させた、条件付きESAM欠損マウスを作製。その解析により、胎児の肝臓における血管内皮細胞のESAM発現割合と造血幹細胞数は相関関係にあり、胎児の肝臓を用いた器官培養において、血管内皮細胞のESAMが欠損することにより造血幹細胞の維持・増殖が損なわれたことから、血管内皮細胞のESAMも成体型造血の発生に寄与していることが明らかになった。

今回の研究成果により、造血発生の仕組み、特に赤血球造血に関する理解が深まると考えられる。研究グループは、「再生医療や遺伝子治療を通じて、遺伝性貧血など先天性の造血器疾患の治療法開発への基盤研究となることが期待される」と、述べている。

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