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肝臓の成熟には不要になったmRNAの分解が不可欠であることを発見-理研

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2019年02月26日 AM11:30

肝臓の成長過程におけるmRNA発現動態を解析

理化学研究所は2月22日、生物の成長過程で肝臓が成熟した機能を獲得するために、(mRNA)を分解する酵素が大きな役割を果たすことを発見したと発表した。この研究は、理研生命医科学研究センター疾患遺伝研究チームの山本雅チームリーダー(沖縄科学技術大学院大学細胞シグナルユニット教授)、鈴木亨上級研究員らが共同で行ったもの。研究成果は、英科学雑誌「Development」に2月15日付で掲載された。


画像はリリースより

肝臓は、胎児期/幼少期と成体で、造血から代謝へと役割が変わるため、多様なmRNAの発現変動が観察される。肝臓の形成において、成熟した器官としての機能に必要なmRNAを増加させる仕組みが、多くの研究によって明らかにされてきた。一方で、肝臓形成の初期段階で必要であったmRNAは、その後不要になると増加させる仕組みが働かなくなる。しかし、それまでに合成されたmRNAはそのまま残るため、そのmRNAがどのような制御を受けるのかはよくわかっていなかった。

山本チームリーダーらは、mRNAのポリA鎖を削る活性を持つRNA分解酵素「CNOTタンパク質複合体」に注目し、mRNA分解が生命現象に果たす役割を解析してきた。CNOTタンパク質複合体は、酵母から哺乳動物まで幅広い種に存在することがわかっており、普遍的かつ主要なmRNA分解酵素であると考えられている。今回、共同研究グループは、肝臓の成熟が開始する段階でCNOTタンパク質複合体が働かなくなる遺伝子改変マウス(CNOT変異体マウス)を作製し、肝臓の形成に与える影響を調べた。

」変異マウスは肝臓に異常

結果、CNOT変異体マウスの肝臓は、炎症、壊死、脂肪の異常蓄積など、さまざまな病態を発症していることがわかった。さらに、CNOT変異体マウスの血液検査により、ASTや ALTの値が高く、肝機能障害を起こしていることが判明。また、CNOT変異体マウスは、炎症に伴って胸腺、脾臓が肥大化しており、肝機能障害が原因となり体重が減少していた。

次に、肝臓の形成段階を追ってmRNAの発現を調べたところ、正常なマウスでは胎児期/幼少期の肝臓で発現の高いmRNAが、成熟した時期には大きく減少しているのに対し、CNOT変異体マウスでは、成熟しているはずの時期でもmRNAの発現が高いままであることがわかった。CNOT変異体のmRNAは、ポリA鎖が削られていないこともわかった。

不要になったmRNAが分解されることが重要

胎児期/幼少期から成熟した肝臓へ変化したことを示す特徴として、「分裂している細胞がほとんどなくなること」「1つの細胞に核を2つ持つこと」がある。しかし、CNOT変異体マウスでは、成熟するはずの時期でも分裂している細胞や、核が1つの細胞が多いことがわかった。細胞分裂の促進に関わるmRNAや、核を1つのまま維持することに関わるmRNAも、胎児期/幼少期の肝臓で発現の高いmRNAに属している。

一方で、成熟した肝臓で増加するmRNAを調べた結果、CNOT変異体マウスでは十分に増加していないことが示された。胎児期/幼少期の肝臓で発現の高いmRNAから産生されるタンパク質の中には、成熟した肝臓で働くmRNAを増加させない効果を持つものが知られており、それらのmRNAが分解されなかった影響と考えられるという。

今回の研究から、肝臓の成熟には、不要なmRNAを積極的に分解することが必要であるとわかった。mRNA分解を実行していたCNOTタンパク質複合体は、肝臓以外の器官にも存在するので、他の器官の形成・成熟の仕組みを理解することにも役立つと考えられる、と研究グループは述べている。

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