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避難指示区域の屋内汚染、原発からの距離と相関-東北大

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2016年06月02日 AM06:00

住家95軒の家屋内汚染レベルを初調査

東北大学は5月30日、同大学大学院薬学研究科ラジオアイソトープ研究教育センターの吉田浩子講師が、福島県飯舘村、南相馬市小高区、双葉町、大熊町、富岡町の避難指示区域の家屋について、部屋、屋根裏及び柱の表面汚染を乾式スミア(拭き取り)法によってサンプリングし、屋内汚染の評価を行った結果、汚染レベルは原発からの距離と相関関係があることを明らかにしたと発表した。研究成果は、英国の科学雑誌「Scientific Reports」に、5月23日付けで掲載されている。


画像はリリースより

一般に住民は自宅屋内で過ごす時間がもっとも長いため、身近な屋内汚染は毎日の日常的な被ばくに繋がる可能性がある。放射性プルームが通過する際に、降雨がないと乾性沈着が生じるが、気密性の悪い(風通しの良い)日本の木造住家では換気率が高く、プルーム通過時の住家への空気(エアロゾル)の入り込みにより屋内に乾性沈着が生じたと考えられる。また、屋内は除染対象となっていないことから、今後の住民の帰還にあたって屋内汚染の状況を知ることは重要だ。しかし、福島原発事故後にこの観点からの調査及び報告はなかった。

今回の報告は、2013年7月から2015年1月にかけて、95軒の住家で2,653の試料を採取した調査結果をまとめたもの。調査は、すべての部屋および屋根裏の平面、並びに柱の垂直面を対象とし、人の掃除などの生活活動による影響を避けるため、人の手が加わっていない箇所についてサンプリングを行っている。

放射性セシウムによる表面汚染密度、原発に近い地域で高く

調査の結果をもとに、地域ごとに放射性セシウムによる表面汚染密度の頻度分布を相対的に示した図によると、飯舘村では表面汚染密度の低い数値に分布しているが、大熊町、双葉町や富岡町の原発により近い地域では高い数値にまで分布が広がっている。このように頻度分布には明らかな地域差があり、原発からの距離と関係のあることが示された。

一方、屋外・屋内の空間線量率には、距離との相関関係は認められなかった。屋外の空間線量率は主に放射性セシウムの湿性沈着によるもので、降雨とともに湿性沈着はまだらに生じたため原発から離れた地域でも高い沈着が観察されたが、これとは異なり乾性沈着は原発からの距離に伴い減少していることを意味している。

なお、屋内の空間線量率は屋外の湿性沈着の影響が強く、屋外の空間線量率のほぼ0.4の値となっている。また、原発に近い地域の住家では湿性沈着(屋外の空間線量率)が低くても、屋内の汚染レベルが高い例があることも示されたとしている。

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