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重症心不全、LVAD装着後の大動脈弁開放と右室予備能の関連判明-北大

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2025年07月02日 AM09:30

LVAD装着後の大動脈弁開放、左室機能以外の因子は不明だった

北海道大学は6月12日、左室補助人工心臓()装着後の重症心不全患者の詳細な血行動態評価を運動負荷右心カテーテル検査により行い、LVAD装着後患者の大動脈弁開放には、従来考えられていた内因性の左室機能よりも右室予備能が重要であり、治療標的となる可能性があることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大病院循環器内科の竹中秀助教、大学院医学研究院循環器内科学教室の佐藤琢真客員研究員、永井利幸准教授、安斉俊久教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「The Journal of Heart and Lung Transplantation」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

心不全に対しては、一般的に標準薬物治療や心臓再同期療法などの非薬物治療が行われるが、最大限の内科治療で心不全が克服できない症例には、LVADおよび心臓移植が適応になる。LVAD 装着後重症心不全患者において、大動脈弁開放の管理を行うことは、血栓症や大動脈弁閉鎖不全症の重大な合併症の予防となる。従来、内因性左室機能が良好な症例は大動脈弁が開放しやすいと考えられていたが、LVAD装着後患者のほとんどは高度な左室機能障害を有している。そのため、右室予備能が注目されているが、運動負荷時に初めて把握することが可能な右室予備能と大動脈弁開放との関連については明らかになっていなかった。

LVAD装着後患者における右室予備能と大動脈弁開放の関連を検証

今回の研究では、2020年6月~2024年10月に北海道大学病院に検査入院したLVAD装着後重症心不全患者25人を対象として、運動負荷時に右心カテーテル検査、心エコー検査を同時に実施し、右室予備能と大動脈弁開放との関連を検証した。

右室予備能の指標として、安静時と運動時の右室拍出係数の変化量(ΔRVSWI:right ventricular stroke work index、右室ストローク仕事量の変化)を測定した。心エコー検査では、大動脈弁の状態を同時に評価し、安静時および運動時の大動脈弁開放群(7人)、運動時のみの大動脈弁開放群(8人)、安静時および運動時の大動脈弁閉鎖群(10人)の3群で検討した。

大動脈弁開放と最も関連するのは右室予備能であることが判明

対象患者の年齢は、中央値50(四分位範囲[IQR 39-62])歳だった。安静時および運動時の大動脈弁閉鎖群におけるΔRVSWI(中央値 0.7[IQR 0.0-1.8]mmHg/L/m2)は、安静時および運動時の大動脈弁開放群(中央値 4.7[IQR 2.5-8.9]mmHg/L/m2)と運動時のみの大動脈弁開放群(中央値 4.1[IQR 2.4-6.8]mmHg/L/m2)よりも有意に低下していた。

多変量ロジスティック回帰分析では、ΔRVSWIは大動脈弁開放と独立かつ有意に関連しており、内因性左室機能の指標である運動負荷時の左室駆出率の変化率よりも強く関連していた。

生存解析では、安静時および運動時の大動脈弁閉鎖群では、安静時および運動時の大動脈弁開放群、運動時のみの大動脈弁開放群と比較し、全死亡または入院を要する右心不全、大動脈弁閉鎖不全症、血栓塞栓症、出血の複合有害事象の発生率が有意に高いことが明らかになった。

右室予備能をターゲットにした治療介入でLVAD装着後患者の予後改善に期待

今回の研究では、LVAD装着後患者において、大動脈弁開放と右室予備能が独立かつ有意に関連していた。今後は、右室予備能の低下により大動脈弁開放が認められないと判断できる患者に対しては、肺血管拡張薬など右室仕事量を減少させる個別化介入を早期に実施し、大動脈弁開放を維持する管理を行うことで、合併症の減少さらには生命予後改善に寄与できる可能性が示唆された。

「心臓移植を目的としない長期在宅補助人工心臓治療(DT: destination therapy)が増加する時代において、LVAD装着後患者の長期的な生命予後、生活の質が改善されることも期待される」と、研究グループは述べている。

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