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小細胞肺がん治療の新薬タルラタマブ、後藤功一氏「生存に寄与する薬剤」

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2025年07月01日 PM05:00

高い再発率と乏しい選択肢―小細胞肺がん治療の現状


後藤功一氏(アムジェン提供)

がん化学療法後に増悪した進展型小細胞肺がん(SCLC)に対し、2025年4月に約20年ぶりの新薬「イムデトラ(R)」(一般名:タルラタマブ)が発売された。これを受け、6月20日に開催されたアムジェンのメディアセミナーでは、国立がん研究センター東病院副院長の後藤功一氏が登壇。後藤氏は、長年治療選択肢が限られていたSCLC治療の現状を概説し、新薬の登場を「有効性が期待できて生存に寄与する薬剤」と評価。その臨床的意義と、適正使用に向けた課題について解説した。

肺がん全体の約15%を占める悪性度の高い神経内分泌腫瘍であるSCLC1)2)の病態について、後藤氏は次のように説明する。

  • 極めて高い増殖能と転移能を持ち、診断時には多くの患者で遠隔転移が認められる
  • 初回化学療法には感受性が高いものの、多くの患者で再発し、その後の予後は極めて不良であった

後藤氏は「SCLCは初回治療が奏効しても多くが再発し、2次化学療法の選択肢は乏しく奏効率も限定的な状況が続いていた。そんな中で、有効性が期待できて生存に寄与する薬剤としてタルラタマブが登場した意義は大きい」と、長年のアンメット・メディカルニーズが満たされることへの期待を述べた。

タルラタマブの特徴と適正使用に不可欠な副作用マネジメント


小寺一平氏(アムジェン提供)

セミナーではまた、アムジェンの小寺一平氏がタルラタマブの特徴を紹介した。
タルラタマブには一度に2つの異なる標的に結合させるという特徴がある。その機能によって、がん細胞(DLL3)と免疫細胞(CD3)を物理的に近づけ、患者さん自身の免疫力を活用してがんを攻撃させるという、これまでの治療薬にはない新しい作用機序を持つ。
後藤氏は、この結果は治療選択肢が尽きた再発SCLC患者にとって新たな希望となりうると評価する一方で、タルラタマブによる特徴的な副作用への適切なマネジメントが不可欠と力説する。

  • サイトカイン放出症候群(CRS):T細胞の活性化に伴う全身性の炎症反応。投与早期、特に初回投与時に多く見られ、迅速な対応が求められる
  • 免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS):失語症や意識レベルの変化など中枢神経系の副作用で、治療初期からの慎重な観察が必要

タルラタマブの登場は、これまで治療選択肢が限られていた再発SCLC患者にとって、新たな治療戦略の構築を可能にするものである。後藤氏は、適切な副作用管理のための医療従事者への教育と経験の蓄積が今後の課題だと指摘した。
現在、セカンドラインやファーストラインでの有効性を検証する臨床試験も進行中であり 、SCLC治療における本薬の役割がさらに明確になることが期待される。(

1)Sung H, et al. CA Cancer J Clin. 2021;71(3):209-249.
2)Rudin CM, et al. Nat Rev Dis Primers. 2021;7:3.

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