潰瘍性大腸炎では、いまだにアンメットメディカルニーズが存在する
ファイザー株式会社は9月12日、中等症~重症の潰瘍性大腸炎に対する治療薬として、スフィンゴシン1-リン酸受容体(S1P1,4,5)調節薬「ベルスピティ(R)錠 2mg」(一般名:エトラシモドL-アルギニン)を発売したと発表した。

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潰瘍性大腸炎は大腸におけるびまん性および連続性の粘膜炎症性病変を特徴とし、寛解と再燃を繰り返す慢性炎症性腸疾患。主な症状として粘血便、下痢、腹部不快感、腹痛等があり、倦怠感や貧血などもみられる。治療薬は近年選択肢が増えているものの、十分な治療効果が得られなかったり、二次無効で再燃を繰り返したりするなどで悩む患者も多くいる。厚生労働省の研究班によると、患者の50%が再燃寛解型の臨床経過を示したと報告されている。また、欧州の地域住民のコホート研究においては、患者の10年間累積再燃率が67%だったという報告もある。
難治例では、生物学的製剤やJAK阻害薬により寛解を達成できるようにもなったが、先進医療を開始した患者の44.3%が、治療開始後12か月以内に1剤以上の生物学的製剤およびJAK阻害薬に対して効果が不十分、46.1%の患者は治療開始12か月時点で寛解達成できなかったとの海外研究もあり、アンメットメディカルニーズが存在している。
1日1回服用の「スフィンゴシン S1P 1、4、5調節薬」
ベルスピティは、S1P受容体サブタイプ1、4、5に対して選択的に活性を示すよう設計されたS1P受容体調節薬であり、潰瘍性大腸炎を含む炎症性疾患に対する1日1回の経口投与製剤。同剤は潰瘍性大腸炎にかかる効能・効果で、2023年10月に米国で承認されて以降、2025年6月時点で、欧州連合、英国、カナダ、オーストラリア、シンガポール、スイス、イスラエル等、38の国と地域で承認されている。
同剤は、中等症~重症の活動期にある潰瘍性大腸炎の患者を対象とした国際共同第3相試験(ELEVATE UC 52試験、ELEVATE UC 12試験)および国内第3相試験(ELEVATE UC 40 Japan試験)の結果等に基づき2024年6月に日本で承認申請を行い、2025年6月24日に製造販売承認を取得した。
12/52週間治療後の臨床的寛解率でプラセボに対する優越性示し、IBDQスコアも改善
LEVATE UC 52試験は、中等症~重症の活動期にある潰瘍性大腸炎患者を対象に、エトラシモド2mgまたはプラセボを1日1回、最長52週間投与し、有効性および安全性を評価した第3相、多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験。ELEVATE UC 12試験は、中等症~重症の活動期潰瘍性大腸炎患者を対象に、エトラシモド2mgまたはプラセボを1日1回、12週間投与し、有効性および安全性を評価した第3相、多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験。
エトラシモドは両試験の主要評価項目である12週間および52週間治療後の臨床的寛解率で、プラセボに対する優越性を示し、安全性プロファイルも良好だった。また、同剤は健康関連QOLを測定するIBDQ(Inflammatory Bowel Disease Questionnaire)スコアの改善も示した。
40週間治療後の臨床的寛解率もプラセボと比べ「高」、安全性も確認
ELEVATE UC 40 Japan試験は、中等症~重症の活動期にある潰瘍性大腸炎患者を対象としたELEVATE UC 12試験で12週間投与を完了した日本人患者を対象に、ELEVATE UC 12試験と同じ投与群に割り付け、エトラシモド2mgまたはプラセボを1日1回、40週間投与し、有効性および安全性を評価した第3相、二重盲検、プラセボ対照継続投与試験。
同剤は、主要評価項目である40週間(ELEVATE UC 12試験での投与期間を含めると52週間)治療後の臨床的寛解率で、プラセボに対して高い寛解率を示した。また、安全性プロファイルも良好だった。
同社は「中等症~重症の潰瘍性大腸炎に悩む患者の新たな治療選択肢として、本剤が患者の生活を大きく変えるブレークスルーになることを願っている。ベルスピティを通じて、さらにこの領域でより広く患者と医療従事者の皆様に貢献するため、透明性の高い情報提供により、適正使用を推進していく」と、述べている。
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・ファイザー株式会社 プレスリリース


