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妊娠中PFAS濃度と4歳時点の子の発達の遅れ、関連は認められず-北大ほか

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2025年06月20日 AM09:20

胎児や子どもの健康・発達への影響が注目される有機化合物「

北海道大学は6月6日、妊婦の血中PFAS(per- and polyfluoroalkyl substances)濃度と生まれた子どもの4歳時点の発達の遅れの関連を解析した結果を発表した。この研究は、同大エコチル調査北海道ユニットセンターの伊藤真利子特任講師及び岸玲子特別招へい教授、国立研究開発法人国立環境研究所エコチル調査コアセンターの山崎新コアセンター長、中山祥嗣次長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Environment Internationa」に掲載されている。

子どもの健康と環境に関する全国調査(以下、「」)は、胎児期から小児期にかけての化学物質ばく露が子どもの健康に与える影響を明らかにするために、平成22(2010)年度から全国で約10万組の親子を対象として環境省が開始した、大規模かつ長期にわたる出生コホート調査。さい帯血、血液、尿、母乳、乳歯等の生体試料を採取し、保存・分析するとともに、追跡調査を行い、子どもの健康と化学物質等の環境要因との関連を明らかにしている。エコチル調査は、国立環境研究所に研究の中心機関としてコアセンターを、国立成育医療研究センターに医学的支援のためのメディカルサポートセンターを、また、日本の各地域で調査を行うために公募で選定された15の大学等に地域の調査の拠点となるユニットセンターを設置し、環境省と共に各関係機関が協働して実施している。

炭素とフッ素の結合を含む有機化合物のうち、ペル及びポリフルオロアルキル化合物(per- and polyfluoroalkyl substances)を総称して「PFAS」と呼ぶ。PFASの中には撥水・撥油性を有するものがあり、撥水撥油剤、界面活性剤、消火剤、調理器具のコーティング剤などに使用されている。一方で、PFASの一部は、環境中で分解されにくい性質を持ち、環境生物ならびに人への影響が懸念されている。特に、環境化学物質の影響を受けやすいとされる胎児や子どもの健康・発達への影響が注目されている。

エコチル調査参加の妊婦1万5,131人対象、8種類のPFASを解析

そこで今回の研究では、胎児期のPFASのばく露の指標となる母親の血中PFAS濃度と生まれた子どもの4歳時点の発達の遅れの関連を明らかにすることを目的とした。エコチル調査に協力した妊婦1万5,131人の血液中の28種類のPFAS濃度を測定。そのうち、60%以上の妊婦で報告限界値を超える濃度が検出された8種類のPFAS(PFOA、PFNA、PFDA、PFUnA、PFDoA、PFTrDA、PFHxS、PFOS)を解析に使用した。子どもの発達の遅れの評価には、質問尺度(JASQ-3)を用いた。5種類の発達領域(コミュニケーション、粗大運動、微細運動、問題解決、個人・社会)について発達の度合いを得点化した。日本人の標準的なデータに基づいて、定められた点数を下回った場合に「発達が遅め」と定義した。

妊婦の血中PFAS濃度と子の発達の遅れ、関連は認められず

その結果、妊婦の血中PFAS濃度と生まれた子どもの発達の遅れとの間に関連は認められなかった。8種類のPFAS濃度と5種類の発達領域との関連性を検討した40の統計的検定のうち、各PFAS濃度が相対的に高いと発達の遅れのリスクが高い傾向を意味する関連は1、逆に、各PFAS濃度が相対的に高いと発達の遅れのリスクが低い傾向を意味する関連は12であった。検定の多重性を考慮すると、リスクが高まる関連性は認められないと判断された。8種類のPFASの混合物全体との関連も解析したが、発達の遅れとの間に関連は認められなかった。

その他の種類のPFASと発達との関連は不明、今後明らかに

今回の結果は、8種類のPFASを解析したものであり、その他の種類のPFASと発達との関連はまだわかっていない。また、発達の遅れの評価は、養育者の回答に基づいており、専門家による診断とは異なる可能性がある。引き続き、子どもの健康・発達に影響を与える化学物質等の環境要因を明らかにしていくことが期待される、と研究グループは述べている。

 

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