世界的な疾病負荷の増大に備えるために、地域ごとのIBD発症動態の正確な把握が重要
北里大学は5月8日、世界規模の疫学調査により、炎症性腸疾患(IBD)の進展4段階を解明したと発表した。この研究は、同大北里研究所病院 炎症性腸疾患先進治療センターの小林拓センター長(同大医学部 消化器内科学 准教授兼任)らを含む国際共同研究チーム(主導:カナダ・カルガリー大学 Gilaad G. Kaplan教授、中国・香港中文大学 Siew C. Ng教授)らの研究グループによるもの。研究成果は、「Nature」に掲載されている。

IBDは、これまで欧米を中心に増加してきたが、近年では新興国においても急速に患者数が増加している。世界的な疾病負荷の増大に備えるためには、地域ごとの発症動態を正確に把握し、予測することが求められている。
IBDの体系化、各国の医療政策立案や予防策の設計に向けた科学的基盤を提供
そこで研究グループは、過去100年にわたる80以上の地域からの500以上の疫学研究データを解析し、IBD(潰瘍性大腸炎とクローン病)の世界的な進展を「4つの疫学段階」として体系化することに成功した。具体的な4段階は以下の通り。
1)出現期:低所得国に見られ、発症率・有病率ともに低い段階
2)発症急増期:産業化と生活習慣の変化に伴い新規発症が急増する段階
3)有病率増加期:発症率は安定するが、累積患者数の増加により有病率が上昇
4)有病率平衡期:発症と死亡が釣り合い、有病率が安定する段階(2045年頃予測)
今回の体系化により、各国の医療政策立案や予防策の設計に向けた科学的基盤が提供された。「本研究に基づき、低・中所得国での疫学サーベイランス強化や、高所得国での高齢IBD患者に対する包括的ケア体制整備が求められる。また、予防の鍵となる環境因子や腸内マイクロバイオームへの介入も重要視されている」と、研究グループは述べている。
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・北里研究所 プレスリリース