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症候性軽度頸動脈狭窄症、「内科治療+CEA」で脳梗塞再発を抑制-富山大

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2025年05月02日 AM09:20

症候性軽度頸動脈狭窄症に対する外科治療の意義は?

富山大学は4月24日、プラーク性状に基づいた症候性内頸動脈軽度狭窄症(50%未満)の予後と外科治療の意義を検討した「MUSIC研究」の結果を発表した。この研究は、同大学術研究部医学系の柏﨑大奈講師らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Neurosurgery」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

従来、頸動脈狭窄症に対する外科治療の適応は、狭窄度によって判断されることがゴールドスタンダードとされてきた。なかでも50%未満の症候性軽度内頸動脈狭窄は、脳梗塞発症リスクが低く、頸動脈内膜剥離術()の有効性は否定されてきた。しかし近年、画像技術の進歩により、軽度内頸動脈狭窄の中でもプラークイメージングによって脆弱なプラークが確認された症例では、脳梗塞の発症リスクが高いことが明らかになってきた。

50%>の症候性軽度内頸動脈狭窄症による虚血性脳・眼動脈イベントを呈した124例を解析

このような背景のもと、MUSIC研究は50%未満の症候性軽度内頸動脈狭窄症における病態の解明と、より適正な治療方法を解明する目的として、国内の多施設による共同研究として実施された。同研究は2017年からの4年間にわたり国内28施設において治療されたNASCETで、50%未満の軽度内頸動脈狭窄に起因する虚血性脳・眼動脈イベントを呈した患者のうち、登録後2年間の追跡が可能であった124例を対象とした多施設共同前向きコホート研究である。

治療を受けた1割が軽度内頸動脈狭窄、8割が不安定プラーク

登録段階で56.5%が狭窄と同側の脳梗塞の既往があり、43.5%は抗血小板剤の投与を受けていた。症例登録時の内頸動脈狭窄率は22.4±13.7%と極めて低いにもかかわらず、約80%はMRIにより不安定プラークと診断された。これにより、症候性軽度内頸動脈狭窄は、単なる動脈硬化の初期段階とは言えないことが明らかになった。

また、研究に参加した各施設では、同時期に全体で1,208例の内頸動脈狭窄症の治療が行われており、症例登録基準に該当する軽度内頸動脈狭窄症例は約10%を占めていた。したがって、同疾患は決してまれな病態ではないことが判明。全症例のうち59例ではBMT(best medical treatment)単独で治療され、63例にはBMTに加えてCEAが実施された。

CEA施行群はBMT群と比べ、治療後の虚血性脳卒中発生頻度が低く機能予後も良好

一次エンドポイントである追跡期間中の同側の虚血性脳卒中は、CEA群と比較してBMT群で有意に多く(15.1% vs 1.7%、p=.03)、さらに二次エンドポイントである追跡期間中の同側の虚血性脳卒中+全脳卒中+全死亡+CEAやCASを必要とするプラークの進行についてもBMT群で有意に多い結果となった(31.4% vs 7.3%、p=.01)。加えて、登録後2年目の良好な機能予後(mRS:0-2)の割合においても、CEA群で有意に高い結果だった(96.2% vs 86.0%, p=.01)。

以上の結果から同研究は、CEA施行群においてBMT群と比較し、治療後の虚血性脳卒中発生頻度が低く、かつ機能予後が良好であることを明瞭に示した、初の前向き研究となった。

内科治療+CEA実施で、内科治療単独と比較して有意に脳梗塞の再発を抑制可能

今回の研究により、内科治療に加えてCEAを実施することで、内科治療単独と比較して有意に脳梗塞の再発を抑制できることが明らかにされた。「本研究は、治療方法を各参加施設に委ねたコホート研究ではあるが、本疾患に対するCEAの有効性を示した初の前向き研究として意義深いものである。また、狭窄度重視時代からプラーク性状を重視する治療方法の選択へのパラダイムシフトを反映している。この成果により、症候性軽度内頸動脈狭窄に対する治療方法に大きなインパクトを与えたと考えられる」と、研究グループは述べている。

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