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精神科オンライン診療、対面診療と同等の治療効果を非劣性試験で証明-慶大ほか

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2023年12月20日 AM09:20

オンライン診療が馴染みやすい精神科、診療報酬の課題などで利用されず

慶應義塾大学は12月18日、複数の精神疾患に対するオンライン診療を用いた治療効果が、対面診療と比較して劣らないことを、国内初の無作為化比較試験(非劣性試験)で明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学部ヒルズ未来予防医療・ウェルネス共同研究講座の岸本泰士郎特任教授らJ-PROTECT共同研究グループ(大阪医科薬科大学の金沢徹文教授、京都府立医科大学の中前貴講師、神戸大学の菱本明豊教授(研究当時は横浜市立大学)、東北大学の富田博秋教授、他、総合病院、精神科病院、診療所など国内19の精神科医療機関が参加)によるもの。研究成果は、「Psychiatry and Clinical Neurosciences」電子版に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

精神科領域の外来診療は、患者と医師との会話が診療の大部分を占め、ビデオ通話を利用して行う遠隔医療(以下、)が馴染みやすい診療領域と言える。諸外国では比較的古くから利用されていたが、)のパンデミックを契機に、その利用は急速に広がった。日本でもパンデミックに伴い規制緩和が行われたものの、診療報酬上の制限が強いこともあり、オンライン診療は現在、精神科領域でほとんど利用されていない。そのような中、日本でオンライン診療の規制緩和を進め、普及促進を行っていくためには、国内の医療環境でのエビデンスが求められていた。

うつ病・不安症・強迫症で、オンライン/対面診療の治療効果・継続率・患者満足度など比較

そこで、研究グループは、通常の保険診療の枠組みで、オンライン診療と対面診療との治療効果や、治療継続率、患者の満足度などを比較することを目的にJ-PROTECT試験を実施。試験では、うつ病、不安症、強迫症の外来患者を対象に、オンライン診療を用いるグループと用いないグループに分け、24週間の外来治療を行った。研究当時のガイドラインに基づき、オンライン診療を用いるグループは対面診療も一部併用(ただし全診療の50%以上をオンライン診療とする)。有効性の評価には、精神的側面のQOLサマリースコアSF-36MCSを用いた。同試験は日本の11都道府県の19医療機関で行われ、患者199人が参加。オンライン診療併用群における平均オンライン使用割合は77.0%だった。

オンライン診療併用群の非劣性を確認、対面より通院時間「短」/費用「安」

試験の結果、主要評価項目のSF-36MCSについてオンライン診療併用群は48.50±9.57、対面診療群は46.68±10.58であり、SF-36MCSの群間の平均値の差の両側95%信頼区間は下限値-1.12、上限値4.77だった。両側95%信頼区間の下限値が非劣性マージン(-5.0)を上回ったため、対面診療群に対するオンライン診療併用群の非劣性が検証できた。また、治療継続率、満足度など、多くの副次評価項目についても両群に有意差は認められなかった。一方、オンライン診療併用群では、対面診療と比較して通院時間が短く、通院費用も安価だったことが確認された。

精神科医師「対面同様にコミュニケーションできている」、アンケート調査より

J-PROTECT試験では治療効果等の検証に加えて、治療を担当した精神科医師のアンケート調査も実施。アンケート結果をまとめた論文はJournal of Technology in Behavioral Science誌に掲載されている。(慶應義塾大学の木下翔太郎特任助教ら)。

アンケート結果から、オンライン診療でも患者は対面診療同様にコミュニケーションができていると医師は感じていること、オンライン診療によって医師が患者のニーズに対応しやすくなると医師が感じていることがわかった。一方、オンライン診療普及に向けての制度上の課題としては診療報酬が一番の課題であること、などが明らかになった。

オンライン診療に対する規制緩和・普及促進に向けたエビデンスとして期待

今回の研究は、国民皆保険により安価で医療を受けられるという特有の制度を持つ日本において、初めて大規模で実施された実臨床に即したオンライン診療の無作為化比較試験だ。日本では、安価な医療費の裏返しとして、医療従事者が諸外国と比較しても多くの患者を診療する必要があるため多忙となっている。そのような環境下でも、オンライン診療が対面診療と同等の有効性を持つことが確認されたことの意義は大きいとしている。オンライン診療と対面診療を比較した大規模試験は国内初のため、今後のオンライン診療に対する規制緩和、普及促進に向けた重要なエビデンスになると考えられる。

また、精神科領域におけるオンライン診療は、離島・僻地への医療提供、専門医偏在の解決、症状により通院困難な患者やスティグマ(差別意識)を恐れ精神科の通院自体を忌避する患者などへの医療アクセス改善など、さまざまな課題解決につながることが期待される。しかし、現状の法規制においては、精神科領域のオンライン診療は他診療科よりもさまざまな面で厳しく制限されている。また、患者のニーズに十分に応えられていないなど、改善が望まれている状況にある。同研究成果はそのような状況に一石を投じ、さらなる普及に向けた政策的議論の活性化にもつながるものである、と研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

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