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「反応性姿勢制御」改善のウェアラブルデバイス開発、転倒予防に期待-東京理科大ほか

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2023年11月29日 AM09:30

転倒リスクの反応性姿勢制御低下、家庭で簡単にトレーニングできるデバイスが必要

東京理科大学は11月27日、反応性姿勢制御を改善するウェアラブルデバイスを開発したと発表した。この研究は、同大創域理工学部機械航空宇宙工学科の山本征孝助教、竹村裕教授、同大学大学院創域理工学研究科機械航空宇宙工学専攻の芳川大輝氏(修士課程2年)、鷲田拓氏(修士課程1年)、県立広島大学保健福祉学部理学療法学科の島谷康司教授の研究グループによるもの。研究成果は、「IEEE Journal of Translational Engineering in Health and Medicine」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

高齢者は予期せぬ外乱の後に足底圧中心(COP)を安定させる能力が、若年成人よりも低下している。さらに、転倒経験のある高齢者では、転倒経験のない高齢者に比べて反応性姿勢制御(予期せぬ外部からの刺激の後に、姿勢の安定性を回復する能力)が低下することが知られている。反応性姿勢制御の低下は、COP変位、COP速度、予期せぬ外乱に対する反応時間の遅延を招き、転倒につながる大きなリスクになる。

予期せぬ外乱を意図的に与えるバランストレーニングは、反応性姿勢制御を改善する効果的な治療法だ。しかし、そうしたバランストレーニングは、大型で高価な治療器具や医療専門家の指導を必要とするため、実施が困難。家庭で簡単に反応性姿勢制御を改善するためには、軽量、小型、ウェアラブルで、小さな予期せぬ外乱を与えることができるデバイスの開発が必要とされている。

軽量・小型・柔軟なウェアラブル・バランストレーニング装置を開発

そこで研究グループは、軽量、小型で、柔軟性があり、安価な空気式人工筋(PAM)アクチュエータとして活用して、家庭で簡単に使用することができる新たなウェアラブル・バランストレーニング装置(WBED)を開発。先行研究により、WBEDはバランストレーニング装置として使用でき、静的バランス機能を改善することが報告されている。静的バランス機能は、立っている時や座っている時など、支持基底面が変化しない状態で姿勢を保持する能力のことだ。しかし、WBEDが反応的なバランス機能に及ぼす影響についてはよくわかっていない。

健康な成人男性18人対象、開発デバイスの反応性姿勢制御への影響を検討

そこで今回の研究では、WBEDを用いて外乱を与えるバランストレーニングが、反応性姿勢制御に及ぼす影響を検討することを目的とした。今回、先行研究で報告されているWBEDをベースに、軽量で持ち運びができ、家庭や臨床の場で簡単に使用できる、ソフトサポーター、ソフト骨盤ベルト、電磁弁、CO2タンク、4つのPAMから構成されたWBEDを開発。WBEDの重量は0.9kgで、3分以内に装着でき、スマートフォンからトレーニングのための操作が可能だ。

開発したデバイスの使用が反応性姿勢制御に及ぼす影響を検討するため、健康な成人男性18人を対象に試験を行った。参加者はWBED群とSham群に割り付けられた。介入セッションでは、WBED群の参加者は無作為に縦側方に予期せぬ外乱を受けながらトレーニングを行い、Sham群はデバイスを装着するものの、外乱を受けることなく、WBED群と同じトレーニングを行った。なお、介入セッションの前後に、参加者全員が縦方向および前後方向の足底圧中心変位(COPMLおよびCOPAP)に基づく反応性姿勢制御機能の評価を受けた。

開発デバイスによるトレーニング、反応性姿勢制御を改善

その結果、Sham群ではトレーニング前後で有意な変化は見られなかった。一方、WBED群では、トレーニング後のD-COPML(内外測方向の足底圧中心変位)とV-COPML(内外測方向の足底圧中心変位のピーク速度)がトレーニング前に比べて有意に低下(それぞれp=0.017、p=0.003)。これは、WBEDを用いた外乱ベースのバランストレーニングが、反応性姿勢制御を即座に改善することを示している。

高齢者の転倒予防・スポーツ領域などへの活用に期待

研究グループの山本助教は、「高齢者や転倒傾向の高い人が、自宅で簡単に反応性姿勢制御やバランス能力を向上させる手段が必要と思い、この装置を開発した。高齢者の転倒予防など、医療‧福祉分野での活用はもちろん、姿勢制御能力の改善‧反応性の向上を通じた健康増進やスポーツ領域への展開も期待できる技術だ」と述べており、幅広い用途を視野に入れ、開発を進めていくとしている。

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