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前立腺がんの予測に、生検前MRI画像の最小ADC値が有用な可能性-東京医大

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2023年03月29日 AM11:04

「不必要な生検を回避するため」の因子は、生検前のMRI画像で見つかるか?

東京医科大学は3月27日、MRIの見かけの拡散係数(ADC値)が臨床的に重要な前立腺がんの予測に利用できる可能性を明らかにしたと発表した。この研究は、同大泌尿器科学分野の大野芳正主任教授、小野 朝助教、放射線医学分野の斎藤和博主任教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「International Journal of Clinical Oncology」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

前立腺がんは、日本人の男性のがん罹患率1位の疾患である。血清PSA(前立腺特異抗原)値の異常を契機に生検で診断されるが、臨床的に重要でない(即時治療が必要でない)がんも多く見つかることが問題となっている。このため現在、生検前にMRI撮影をすることが推奨されている。

MRI画像で臨床的に重要ながんが存在する可能性は、PI-RADS(Prostate Imaging and Reporting Data System)スコアを用いて5段階に分けられる。4は「がんの存在する可能性が高い」、5は「がんの存在する可能性が非常に高い」を意味しており、4と5の病変には生検が推奨されている。しかし、がんの検出率はPIRADSスコア4の病変で21.3%~70.5%、PIRADSスコア5の病変で35.6%~95.0%の検出率と報告されており、がんが検出されないことも少なくない。この場合、MRI画像読影時のPI-RADSスコアリングや生検時の標本採取の問題などが原因として考えられるが、生検でがんが見つからなかった場合のフォローアップに関する明確な指針はない。再生検を行うべきかどうかは、生検の侵襲を考えると慎重に判断する必要がある。

前立腺は、辺縁域と移行域に分けられるが、辺縁領域の病変については、がん組織で ADC値が低値であることが報告されている。しかし移行領域の病変についてはほとんど報告がなかった。そこで、前立腺の移行領域における臨床的に重要ながんとMRI画像のADC値との関連を解析し、ADC値が前立腺の移行領域に発生する臨床的に重要ながんの予測に有用であるか否かを明らかにすることを目的に研究を実施した。

前立腺の移行領域で臨床的に重要ながんが検出された病変のADC値は低値

研究グループは、MRIで前立腺の移行領域にPIRADSスコア4または5の病変を指摘され、経会陰式前立腺生検を施行した102例について解析した。102例中50例(49%)で前立腺がんがみつかり、このうち臨床的に重要な前立腺がんは38例(37.3%)だった。臨床的に重要ながんが検出された病変のADC値は平均値692.5±150.6µm2/s、最小値494.5±133.6µm2/sだった。良性組織あるいは臨床的に重要でないがんが検出された病変では平均値785.9±168.6µm2/s、最小値653.8±172.5µm2/sであり、ADC値は臨床的に重要ながんで有意に低値となっていた。単変量解析では年齢、前立腺重量、平均ADC値、最小ADC値が臨床的に重要ながんを検出する因子だった。また、多変量解析では、最小ADC値のみが臨床的に重要ながんを予測する因子とわかった(P<0.001)。

最小ADC値=595をカットオフ値とした場合、陽性的中率59.2%

前立腺移行領域のPIRADS スコア4または5の病変で、臨床的に重要ながんの存在を予測するための最適な最小ADC値のカットオフをROC解析にて求めたところ595µm2/sとなった。この最小ADC値のカットオフ値を用いて生検の適応を決める場合、102人のうち49人が「生検の必要あり」となり、陽性的中率は59.2%(29/49)と改善した。

生検でがんが検出されなかった52例のその後の経過を追跡すると、22例でフォローアップのMRIが撮影されており、22例中17例がPIRADSスコア3以下と評価されていた。依然PIRADSスコア4または5と評価された5例のうち3例で再生検が行われており、臨床的に重要ながんがみつかった1例の最小ADC値は219 µm2/sだった。

カットオフ値の妥当性を検証中

研究グループは現在、前立腺全摘除術の手術検体を用いて臨床的に重要ながんの部位とそれに対応するMRI画像の病変のADC値を測定し、今回の研究で示されたカットオフ値の妥当性を検証している。また今後、外部施設のMRI画像、生検結果を用いての検証も行う予定としている。「MRI画像の最小ADC値を用いた臨床的に重要ながんの予測法が確立されれば、不必要な生検を回避し、患者の予後に関わる臨床的に重要ながんの検出能の改善につながることが期待される。また初回生検でがんが見つからなかった場合の再生検の必要性を判断する際にも利用できると考えている」と、研究グループは述べている。

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