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【IASR速報】新型コロナ新規変異株の積極的疫学調査(第1報)-感染研

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2021年04月27日 PM12:00

HER-SYSに報告の変異株感染確定患者、2021年4月15日時点の状況

国立感染症研究所は4月23日、新型コロナウイルス感染症(新規変異株)について実施された積極的疫学調査の第1回目の暫定的なまとめを病原微生物検出情報(IASR)の速報として発表した。これは、厚生労働省健康局結核感染症課名で協力依頼として発出された、感染症法第15条第2項の規定に基づいた積極的疫学調査(健感発0315第3号、令和3年3月15日)に基づいて集約された、医療機関から寄せられた新型コロナウイルス感染症()新規変異株患者の疫学情報・臨床情報に関するまとめで、今回の報告は、2021年4月15日時点の状況だ。


画像はIASR速報より

以下の条件をすべて満たすものが、今回の調査対象者となった。
(1)2020年12月22日~2021年3月9日までに感染症法に基づくCOVID-19の届出がされた患者
(2)ゲノム検査が実施され、、501Y.V3のいずれかが確定した患者
(3)ゲノム検査結果がCOVID-19等情報把握・管理支援システム(Health Center Real-time Information-sharing System on COVID-19: HER-SYS)に報告された患者
(4)入院医療機関名がHER-SYSに報告された患者(調査期間中の新規変異株患者は原則入院対応)

調査対象の大多数がVOC-202012/01、年齢層の中心は比較的若年層

調査期間中、全国で感染症法に基づくCOVID-19の届出がされた患者は24万2,373例で、うちゲノム検査でVOC-202012/01、501Y.V2、501Y.V3のいずれかが同定・報告された患者が380例(0.16%)、そのうち入院医療機関名が判明した患者が112例(0.05%)だった。112例中110例(0.05%)から調査への協力が得られた。回収割合は98.2%(110/112例)。

110例の性別は、男性52例(47.3%)、年齢の中央値(四分位範囲)は42(27-63)歳で、年齢群では10歳未満(18.2%)、30代(16.4%)、40代(15.5%)の割合が多かった。出身国は日本が最多だった(90%)。入院医療機関の所在都道府県は、新潟県、北海道、広島県、兵庫県、東京都の症例が多く含まれていた。

確定したウイルス株の内訳は、VOC-202012/01が105例(95.5%)、501Y.V2が4例(3.6%)、501Y.V3が1例(0.9%)だった。110例のBMI(body mass index)の中央値(四分位範囲)は21.5(18.6-24.6)kg/m2で、6例(5.5%)は入院時に喫煙歴、1例(0.9%)は常時飲酒歴を認めた。9例(8.2%)は発症14日以内に海外への渡航歴があり、89例(80.9%)は発症14日以内にCOVID-19確定例もしくは疑い例との濃厚接触歴を認めた。主な接触歴の内訳は、家族47例(42.7%)、職場14例(12.7%)、保育・教育関連施設14例(12.7%)だった。9例(8.2%)は発症14日以内に同居家族以外での集団での飲食歴、13例(11.8%)はいわゆる3密空間での滞在を認めた。

発症から初診、診断、入院までの期間の中央値(四分位範囲)は、それぞれ1(0-3)日、2(1-4)日、3(2-6)日であった。110例において、何らかの基礎疾患を有した症例は31例(28.2%)で、高血圧(17例、15.5%)、脂質異常症(11例、10.0%)、肥満(5例、4.5%)の頻度が高かった。

入院時の体温、脈拍数、呼吸数、酸素飽和度の中央値(四分位範囲)は、それぞれ36.8(36.6-37.4)℃、88(79-101)回/分、18(16-22)回/分、97(96-98)%だった。入院時に91例(82.7%)が何らかの症状を認め、19例(17.3%)が無症候だった。入院時の主な症状は、37.5℃以上の発熱(44例、40.0%)、咳嗽(42例、38.2%)、倦怠感(27例、24.5%)で、9例(8.2%)に酸素需要を認めた。入院時の胸部レントゲン検査で28例(25.5%)に、胸部CT検査で49例(77.8%)に肺炎像を認めた。血液検査所見では、白血球数の中央値(四分位範囲)は4,500(3,700-5,700)/µLで、16例(14.5%)がD-ダイマー上昇を認め、D-ダイマー中央値(四分位範囲)は、800(692.5-1,170)ng/mLだった。生化学的検査所見は概ね正常範囲内で、CRPの中央値(四分位範囲)は0.64(0.2-2.2)mg/dLだった。

酸素需要は入院時9例、酸素投与は入院中21例+8例

110例中40例(36.4%)にCOVID-19への直接的な効果を期待して治療介入が行われた。治療介入の内容は、ステロイド24例(21.8%)、レムデシビル21例(19.1%)、ファビピラビル10例(9.1%)、トシリズマブ5例(4.5%)、シクレソニド2例(1.8%)だった。抗血栓・抗凝固療法は予防目的13例(11.8%)、治療目的2例(1.8%)だった。

入院期間中に行われた酸素投与は、鼻カニューレもしくはマスク21例(19.1%)、ネーザルハイフロー8例(7.3%)だった。5例(4.5%)がICUで重症治療を受け、ICU滞在期間の中央値は12(8-13)日であった。5例のうち、3例(2.7%)に人工呼吸器管理、1例(0.9%)に体外式膜型人工肺(ECMO)装着が行われた。全入院期間の中央値(四分位範囲)は16(12-23)日で、入院期間中にPCR2回陰性を確認した80例(72.7%)における入院から2回陰性までの期間の中央値(四分位範囲)は15(12-19)日だった。3例(2.7%)に細菌性肺炎、3例(2.7%)に急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を認めた。

重症例は全例VOC-202012/01

98例(89.1%)が自宅退院し、1例(0.9%)(人工呼吸器管理は行わずにネーザルハイフローによる酸素投与実施)が死亡退院した。重症例(ICUでの治療や人工呼吸器等による治療を行った症例または死亡した症例)は6例(5.5%)で、入院していない症例も含めた従来株におけるこれまでの重症化の割合(約1.6%)と比較すると高い値だったが、調査対象者数が限定的であることや、入院時の重症度や基礎疾患等、重症化の割合に影響を与える因子の調整を行っていないことから、新規変異株の症例における重症化の割合が従来株の症例より高いかどうかについて結論づけることは困難であるという。また、重症例は全例VOC-202012/01で(広島県2例、埼玉県、東京都、大阪府、兵庫県各1例ずつ)、年齢の内訳は、40代1例、50代1例、70代2例、80代2例だった。

今回の調査には複数の制限がある。まず、調査は入院症例を対象に行われた。新規変異株症例は原則入院対応とされているが、変異株と判明した時期、地域のCOVID-19の発生状況等の理由により入院しなかった無症状や軽症症例が調査対象とならなかった可能性がある。また、全国で届け出されたCOVID-19全例にゲノム検査が実施されたわけではない。さらに、今回の調査の第1報は迅速性を重視するために記述疫学のみに限定された。

今回の調査は、日本国内のCOVID-19新規変異株の疫学的・臨床的特徴を初めて明らかにしたもの。同報告は、「今後、新規変異株における重症例と非重症例の比較、従来株と新規変異株との比較等の解析が期待される」として締めくくられている。また、同調査に協力をした各医療関係者に対し謝辞が述べられている。情報提供をした医療機関については、下記関連リンクに記載されている。

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