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ZNF384関連小児急性リンパ性白血病、融合遺伝子の相手により臨床的特徴が異なる-北大ほか

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2021年03月12日 AM11:45

患者218人の臨床情報、白血病細胞の解析データを検討

北海道大学は3月11日、アジアと欧米の国際共同研究を通じて、ZNF384関連の融合遺伝子をもつ小児B前駆細胞性急性リンパ性白血病の患者218人の臨床情報、白血病細胞の解析データの検討から、融合遺伝子の相手により年齢と予後などの臨床的特徴が異なることを解明したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究院小児科学教室の真部淳教授、平林真介助教らの研究グループによるもの。研究成果は、「Leukemia」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより

小児の急性リンパ性白血病()は小児がんのB前駆細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-)の小児がんで最も多く、全体の30%を占める。治療成績はここ数十年で飛躍的に向上し、5年生存率は90%を超えるが、今でも再発をきたす例が存在する。

B-ALLは染色体や遺伝子の異常により、詳細に分類され、その多くは予後と相関することが示されてきた。その中で、特徴的な核型、遺伝子異常が見つからない一群はB-otherと呼ばれ、重要な研究課題となっている。

B-otherの中にはいくつかの新規の融合遺伝子が存在していると考えられ、これらを明らかにすることは、白血病発症機構の解明や新たな分子標的薬の開発などに発展すると考えられる。近年、ZNF384関連の融合遺伝子が有力なサブグループである可能性が示された。そこで今回、研究グループは国際共同研究を行い、その臨床的特徴を検討した。

今回の研究では、アジアと欧米の16におよぶ小児ALL研究グループが共同して作られたPonte di Legnoグループで診療された患者のうち、ZNF384関連融合遺伝子を同定された218人を対象に、白血病由来のDNAとRNA検体からFISH法、RT-PCR法、次世代シーケンスの手法を用いてZNF384融合遺伝子の相手となる遺伝子を調べ、患者の臨床情報と合わせて検討した。

EP300-ZNF384融合遺伝子を有する例の再発率4%、その他に比べて有意に低く

その結果、患者218人において、ZNF384と融合する遺伝子はEP300が43%、TCF3が31%、TAF15が9%、CREBBPが8%、その他を合わせたものが9%だった。男女比に差はなかったが、EP300-ZNF384融合遺伝子は発症年齢の中央値が11歳と比較的高い一方で、TCF3-ZNF384融合遺伝子は5歳と低年齢だった。

ZNF384関連融合遺伝子に共通した特徴として、白血病細胞の表面抗原のCD10が陰性または弱陽性で、CD13、CD33両方またはどちらかが陽性のパターンをとっていた。これは、CD10陽性で CD13やCD33が陰性のことが多い通常のB-ALLとは異なる。

ZNF384関連融合遺伝子を有する患者の治療成績について、全体で5年無イベント生存率は85%、全生存率は91%と良好だった。その中でEP300-ZNF384融合遺伝子を有する例の再発率は4%とその他に比べて有意に低く、5年無イベント再発率92%、全生存率93%と非常に治りやすい白血病であることがわかったとしている。

ZNF384関連融合遺伝子を有するB-ALL、新規検出法の開発へ

ZNF384関連融合遺伝子を有するB-ALLは、共通して表面マーカー上の特徴を持ち、造血幹細胞に近い発現パターンをとるB-ALLの独立したサブグループと考えられる。

一方で、今回ZNF384融合遺伝子の相手により年齢と予後などの臨床的特徴が異なることが示唆された。ZNF384関連融合遺伝子を有するB-ALLは、従来の検査法では検出が難しいものの、臨床的に重要なサブグループであり、この研究結果を受けてFISH法を中心に新たな検出法が開発されつつある。このように、小さなサブグループの解析は一国あるいは一大陸では困難であり、大陸を超えての国際共同研究が必要だ。今回の病型は、日本の報告が先行したことを契機として、国際共同研究を主導できたとしている。

このPonte di Legnoグループは、主に先進国の代表的な小児白血病の研究グループによって1995年に結成されたもので、まれなタイプの白血病の特徴を明らかにしてきた。国内で1年に100万人が診断される成人がんと異なり、小児がんは1年に2,000人程度と発症数が少ない。そのため、国際協調を進めることは研究の進歩のみならず、患者の診断と治療の開発にとっても、大きな意義を有する。今後もこのような体制の継続が望まれる、と研究グループは述べている。

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