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乳がん対象、PRDM14標的の核酸医薬候補「SRN-14/GL2-800」のP1試験を開始-がん研ほか

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2020年09月03日 AM11:45

PRDM14、TNBCを含む乳がん症例の半数以上で高発現

がん研究会有明病院は9月2日、siRNA核酸医薬候補である乳がん治療薬「SRN-14/GL2-800」を用いて、医師主導治験(First In Human試験)を開始したと発表した。この研究は、同病院、、川崎市産業振興財団ナノ医療イノベーションセンター(iCONM)、慶應義塾大学病院、ナノキャリア株式会社(開発時はアキュルナ株式会社)の研究グループによるもの。

乳がんは、日本における女性のがん罹患数で第一位。既存の治療法で患者の3割が転移再発し、年間で1万人が死亡しており、社会的影響が非常に大きい状況だ。乳がんは、ホルモン受容体(エストロゲン受容体:ER、プロゲステロン受容体:PgR)、がん細胞の増殖に関与するタンパク質の一つ(HER2)、がん細胞の増殖活性(Ki67値)の3要素で分類され、その分類に応じて「内分泌療法」、「化学療法」、「分子標的療法(抗HER2療法)」を単独または併用で治療を行う。一方、治癒切除ができないトリプルネガティブ乳がん(TNBC)や、ホルモン療法が効かなくなった遠隔転移を有する、あるいは治癒切除ができない局所浸潤型の乳がんの患者に対する分子標的治療薬に関しては、現状、BRCA遺伝子変異陽性患者におけるPARP阻害剤以外に、標準療法となっている薬物はない。

SRN-14/GL2-800の治療標的分子であるPRDM14分子は、人体のほぼすべての正常組織で発現がなく、TNBCを含む乳がんの症例の半数以上で発現が高いことがわかっている。PRDM14分子は細胞の核で発現する分子であることから、これを標的とする低分子化合物や抗体の開発は極めて難しい。そのため、研究グループは、遺伝子配列情報から開発が可能な核酸医薬品の開発に着手した。さらに、治癒的切除ができない患者を対象とした治療薬の開発を目指すことから、病変への局所注射ではなく、静脈内注射による全身投与による治療方法の創出も喫緊の課題だ。

非臨床試験では、乳がんの腫瘍サイズを縮小、肺転移巣形成を抑制

今回使用する核酸医薬候補のSRN-14/GL2-800は、iCONM、、東京大学医科学研究所が共同で開発した世界初のPRDM14分子に対するキメラ型siRNAとそのナノキャリアーから構成される化合物。PRDM14分子は、乳がんでその発現が特に高いことが札幌医科大学において豊田実(故人)、今井浩三らにより発見された。

SRN-14は、東京大学で開発されたキメラ型siRNAの高い安全性に加えて、特許出願技術であるsiRNA配列探索プログラム(siDIRECT(R))を基盤に治療用配列を選定した、極めて標的分子に対する特異性が高いsiRNA。東京大学、iCONMで開発された核酸ナノキャリアーである、分岐型PEG-ポリオルニチンブロックポリマー(GL2-800)は、核酸と単分散(均一の粒形分布)を示す安定な複合体を形成し、高い安全性、優れた血中滞留性とがん組織への高い集積性を示す。

東京大学医科学研究所と医薬品開発業務受託機関が行った、SRN-14/GL2-800の非臨床試験では、TNBCに由来する乳がん細胞を用いた同所移植モデル、肺転移モデルを作製し、治験薬であるSRN-14/GL2-800を静脈注射で投与。その結果、乳がん細胞で形成される腫瘍サイズの縮小、および肺の転移巣形成の抑制が認められた。さらに、毒性試験において重篤な有害事象は見られなかったとしている。

以上のことから、SRN-14/GL2-800は乳がんの進行を抑えることが期待されたため、治験薬の製剤化と治験の準備を推進した。

治癒的切除不能/遠隔転移の再発乳がんで化学療法の全身投与適応となる患者対象

今回開始された試験は、がん研有明病院において、SRN-14/GL2-800を、ヒトに対して初めて投与する医師主導治験(第1相)。治癒的切除不能または遠隔転移を有する再発乳がんで化学療法の全身投与適応となる患者に対して、用量漸増法で行われる。

主要評価項目である安全性、SRN-14/GL2-800投与後の薬物動態の確認の他、副次的にSRN14/GL2-800の薬効についても検討を行う予定だ。

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