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血液検査で診断した肺がんの遺伝子異常に対するオシメルチニブの有効性を実証-近畿大

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2018年07月24日 PM01:00

内視鏡などの検査が困難な場合に限られている血液検査

近畿大学は7月19日、肺がんにおけるEGFR遺伝子変異に関する医師主導臨床研究で、血液検査で遺伝子変異が確認された患者に分子標的薬オシメルチニブを処方し、その有効性を世界で初めて実証したと発表した。この研究は、同大医学部の髙濱隆幸助教、中川和彦教授、西尾和人教授らが、臨床研究グループ(西日本がん研究機構=WJOG)に参加する研究者らと共同で行ったもの。研究成果は、神戸国際会議場で行われた日本臨床腫瘍学会学術集会で発表された。

肺がんでは、EGFR遺伝子に変異が起こると、がん細胞が際限なく増殖するようになるため、増殖を阻害するチロシンキナーゼ阻害剤による治療が有効だ。しかし、服用開始から1年ほどで阻害剤への耐性がつき、薬の効果が薄れることがある。その原因の約半数を占めるのが、EGFR T790M遺伝子の変異で、これに有効なのがオシメルチニブである。

現在、EGFR T790M遺伝子の変異を確認するには、内視鏡などで腫瘍組織の一部を採取する必要があり、)は内視鏡などの検査が困難な場合に限られている。これは、血液検査で変異が確認された患者へのオシメルチニブの有効性を示す研究が無かったためだ。血液検査を用いた検査は、低侵襲で繰り返し採取が可能であり、検査結果が出るまでの期間も短いなどの利点がある。また、EGFR T790M遺伝子変異は、治療の経過の中で出たり出なかったりすることから、採取の対象に制限が設けられている状況は好ましくないと考えられている。

全体奏功率55.1%、患者の負担軽減に期待

研究グループは、リキッドバイオプシーでT790M遺伝子変異陽性が確認された患者を対象に、オシメルチニブの有効性を確認する単群第2相試験を実施。EGFR遺伝子変異陽性患者において、過去に1レジメン以上のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤()を用いた治療歴があり、前治療中に病勢進行が確認されたPerformance status 0または1の患者をスクリーニングし、その中で血漿T790M陽性が確認された症例を適格とした。登録患者には、80mg/日を経口投与。主要評価項目は、コバス(R)EGFR変異検出キットv2.0を用いて血漿T790M遺伝子変異が確認された患者における奏効率だった。

同試験では、2016年6月~2017年12月までの間に276症例がスクリーニングを受けた。血漿T790M遺伝子変異陽性は73例で確認され、その中で治験治療の適格性を満たした53例に対してオシメルチニブ投与を行った。その結果、全体奏効率は55.1%(95%信頼区間:40.2、69.3)で、主要評価項目を達成。オシメルチニブによる毒性は他試験のデータと同様であり、管理可能だったという。

今回の試験は、リキッドバイオプシーを用いた血漿EGFR T790M遺伝子検査陽性が確認された肺がんに対するオシメルチニブによる治療効果を初めて示した前向き試験となった。リキッドバイオプシーによる遺伝子診断を行う際に今回の研究成果が活用され、患者の負担軽減や個別化医療が推進されると期待される、と研究グループは述べている。

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