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SMAの新規ASO薬Salanersen、小児対象P1試験で進行抑制を確認-バイオジェン

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2025年07月08日 AM09:10

ヌシネルセンと同様の作用機序、年1回投与で高い有効性を示す可能性

米バイオジェンは7月3日、脊髄性筋萎縮症(SMA)の治療を目的としたアンチセンス・オリゴヌクレオチド(ASO)であるsalanersen(BIIB115/ION306)の第1相臨床試験におけるトップライン結果を発表した。このデータは、カリフォルニア州アナハイムで開催された「SMA Research & Clinical Care Meeting」で発表された。

SMAは、あらゆる年齢層で罹患が確認される希少な遺伝性神経筋疾患。脊髄と下部脳幹の運動ニューロンが減少・消失することにより、進行性の筋萎縮と筋力低下を引き起こす。SMN1遺伝子の欠損または変異により、運動ニューロンの生存に不可欠なSMNタンパク質の産生が不足することで発症する。自力で座れない、時間とともに歩いたり座ったりなどの能力が失われる人など、重症度や症状は個人によってさまざまだ。出生児1万人に約1人の割合で発症し、乳児における遺伝性死亡の主要な原因のひとつとされている。

salanersenは、世界71か国以上で承認されている既存のSMA治療薬「スピンラザ(R)(ヌシネルセン)」と同様の作用機序を持ちながら、年1回の投与での高い治療効果が期待されている。

遺伝子治療歴のある小児SMAへの投与、神経変性の進行を大幅に抑制

第1相単回漸増投与試験は、salanersenの安全性、忍容性および薬物動態を評価するために実施された試験であり、2つのパートで構成されている。パートAは健康な成人男性を対象とした無作為化プラセボ対照試験、パートBはゾルゲンスマ(オナセムノゲン アベパルボベク)をすでに投与され、臨床的に効果が不十分と判断された小児SMA(脊髄性筋萎縮症)患者を対象とした非盲検試験。

今回の遺伝子治療歴のあるSMA患者を対象とした第1相試験の中間解析は、salanersenを次の段階へ進めるか否かの判断材料とすることを目的として実施された。中間解析結果はパートB(n=24)のデータに基づくもので、参加者はsalanersenを年1回、40mgまたは80mgの用量で投与された。いずれも概ね良好な忍容性を示し、ニューロフィラメントの減少を通じて神経変性の進行を大幅に抑制する効果が確認された。

運動機能の臨床的改善、安全性も確認

さらに、安全性およびニューロフィラメント軽鎖(NfL)に加えて、中間解析時点で追跡調査期間が1年以上であった被験者のサブグループ(salanersen 40mgを投与された2~12歳の8例)について、探索的な臨床結果のデータが評価された。

これらの被験者の半数は、歩く、這う、立つ、座るなど、以前は自力では達成できなかった、または介助を必要とした新たなWHO運動マイルストーンを達成した。さらに、被験者はベースラインから1年後までに運動機能の臨床的改善が認められ、Hammersmith Functional Motor Scale-Expanded(HFMSE)ではベースラインから平均3.3ポイント(SD 4.46)の改善、Revised Upper Limb Module(改訂上肢モジュール、RULM)では5.3ポイント(SD 4.75)の改善が認められた。

第1相試験から得られた累積データによると、salanersenは40mgおよび80mgのいずれの用量においても全般的に良好な安全性プロファイルを示した。有害事象の多くは軽度から中等度であり、主な有害事象は、発熱および上気道感染症だった。

第3相試験で未治療の患者に対しての効果を検証予定

これらの結果を受け、ミラノNeMO臨床センターの臨床・科学ディレクターでミラノ大学神経学教授、salanersen第1相試験の主任研究者のValeria A. Sansone医学博士・博士(Ph.D.)は「臨床試験に参加した小児がすでに遺伝子治療を受けていたことをふまえると、今回得られたデータの中で、ニューロフィラメントの変化とWHOの発達マイルストーンの達成は、特に本試験の結果を表す指標だと感じている。比較的少人数のコホートから得られた初期データではあるが、実施予定の第3相試験において、未治療の患者に対してもsalanersenがどのような効果を示すのか解明していくことを楽しみにしている」と、述べている。(QLifePro編集部)

 

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