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十二指腸がんの術後再発に対する体外切除・自家小腸移植に世界で初めて成功-慶大

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2017年07月06日 PM02:30

ポイツ・イエーガー症候群に起因した十二指腸がんの切除後再発

慶應義塾大学は7月4日、これまで世界での報告例がないPeutz-Jeghers(ポイツ・イエーガー)症候群に起因した十二指腸がんの切除後再発に対する体外切除・自家移植に成功したと発表した。これは、同大学医学部外科学(一般・消化器)教室の北川雄光教授、日比泰造専任講師らが、コロンビア大学医学部外科学の加藤友朗教授によるもの。2017年2月、慶應義塾大学病院で行われた。


画像はリリースより

ポイツ・イエーガー症候群は、皮膚粘膜の色素沈着と消化管に多発する過誤腫性ポリポーシスを特徴とし、がんが高率に見られる疾患。今回手術を行ったのは38歳の男性で、ポリープに伴う腸重積と巨大ポリープに対し、幼少時より3回の開腹手術を経験。4回目の手術として、定期検診で見つかった十二指腸の2つの腺がん病変に対し、膵臓の頭部は温存したままで、十二指腸をほぼ全て切除している(膵頭温存十二指腸亜全摘術)。

術後2年5か月が経過したところで上腸間膜動脈根部を全周性に取り巻くように発育し、血管浸潤を来たした再発病変を認め、以降は化学療法を実施。再発指摘後1年9か月(初回手術後から4年2か月)が経過し、病変の明らかな増大がなく、転移や腹膜播種の所見を認めないことから、患者およびその家族から切除の強い希望があったという。

術前とほぼ同様の日常生活動作を取り戻し、すでに退院

手術では、まず周囲の臓器と重要血管に浸潤をきたした再発腫瘍を健常な小腸から回盲部までを含め、一塊に切除。その後、腫瘍浸潤がない健常な小腸と、再発腫瘍が浸潤をきたしている部分を切離して病変部位を体外で切除した。同時進行で、体内では、膵胃吻合と遠位脾腎静脈吻合(シャント)を行っている。その後に、健常な小腸から回盲部のみを腹腔内に戻し、動脈と門脈を吻合して腸管血流を再開。続けて、胆汁と食物の通過路を再建し、最後に回盲部で人工肛門を造設した。

最終病理組織診断では、剥離面と切除断端に腫瘍細胞の露出はなく、完全治癒切除を達成。手術後は膵液漏と胃内容排泄遅延を認めたものの、重大な合併症なく経過し、患者は術前とほぼ同様の日常生活動作を取り戻し、すでに退院しているという。

腫瘍が生命維持に不可欠な上腸間膜動脈や腹腔動脈に浸潤し、通常の手技では切除不能な症例に対しての小腸を含む腹部臓器の体外切除・自家移植は、1996年に初めて報告されて以来、これまで文献上で数十例を確認するのみだという。ポイツ・イエーガー症候群に合併した十二指腸がんの再発に対するこの手技は、今回が世界で初めての実施例。腫瘍学的観点からは、今後の厳重な経過観察を待たねばならないが、同症例のように複数回の開腹歴を有する再発がんであっても、今回の術式を用いることで、病変の治癒切除が安全に施行し得た点に大きな意義があるという。慶大病院では、今後も患者の病態に応じて、慎重にこの手術の適応を検討していく予定としている。

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