医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 神経因性疼痛の緩和に血小板活性化因子生合成遮断が有効-国がんら

神経因性疼痛の緩和に血小板活性化因子生合成遮断が有効-国がんら

読了時間:約 1分34秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2017年03月31日 PM01:15

PAF産生のループが神経因性疼痛の悪化・持続に関与

国立がん研究センターは3月28日、(PAF)生合成遮断により、未解決な神経因性疼痛を緩和できるという研究結果を発表した。この研究は、同センターと、、理化学研究所の共同研究によるもの。研究成果は、「FASEB Journal」オンライン版に掲載された。


画像はリリースより

神経因性疼痛は糖尿病やがんに伴っても発生する。現在、鎮痛薬としては、アスピリン等の非ステロイド系鎮痛薬やオピオイドなどの医療用麻薬があるが、これらでは解決できない神経因性疼痛があり、これに対する決定的な鎮痛薬は存在しない。近年、神経因性疼痛の分子メカニズム研究が進展し、神経因性疼痛の発症や持続の関連分子として、)やPAFが報告されてきた。

ループを遮断する薬剤が新規カテゴリーの鎮痛薬に

今回、研究グループは、PAFを生合成できない、リゾホスファチジルコリンアシル転移酵素2(LPCAT2)欠損マウスを作製。このモデルで坐骨神経部分を損傷させた神経因性疼痛モデルを作成、疼痛解析を行ったところ、マウス脊髄中のPAFはほとんど検出されず、神経因性疼痛症状であるアロデニアはほぼ発症しなかったという。

さらに、作製した神経因性疼痛モデルでは、脊髄後角のミクログリアが増加し、ミクログリアにはLPCAT2が発現していることを確認。PAFはリン脂質メディエーターであり、細胞外刺激により急激に産生されその分解も調節を受ける。細胞をPAFで刺激してもPAFが産生されることから、PAFがPAFを作るというPAF産生ループが存在し、そのために神経因性疼痛を悪化または持続させているのではないかと推測したという。そこでPAFの刺激をブロックするPAF受容体拮抗剤でマウスマクロファージを処理し、PAF産生を誘導するATPで刺激したところ、刺激後5分程度でATPによるPAF産生はピークに達したものの、刺激後10分程度ではPAF産生の低下が認められた。これはPAF産生にループがあることを示唆しているという。

研究グループは、これらの結果から「PAF Pain Loop」の存在を推測。このループを遮断する薬剤は、非ステロイド系鎮痛薬やオピオイド以外の新規カテゴリーの鎮痛薬になり得ると考えられるという。LPCAT2阻害剤の新規開発や、既に開発済みの多くのPAF受容体拮抗薬を改めて鎮痛薬として見直すことが、新規鎮痛薬開発へとつながるとしている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 肝線維化の治療薬候補を同定、iPS細胞から誘導の肝星細胞で-東大ほか
  • 「ストレス造血時」における造血幹細胞の代謝調節を解明-東北大ほか
  • 食道扁平上皮がんで高頻度のNRF2変異、がん化促進の仕組みを解明-東北大ほか
  • 熱中症搬送者、2040年には日本の都市圏で2倍増の可能性-名工大ほか
  • 日本人がアフターコロナでもマスク着用を続けるのは「自分がしたいから」-阪大ほか