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生物時計の解析可能にし、生後発達を制御する神経ペプチドを同定-北大

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2016年09月14日 PM01:00

Cryが視交叉上核の神経ネットワークをどう変化させるのかを研究

北海道大学は9月12日、生物時計の解析を可能にし、生後発達を制御する神経ペプチドの同定に成功したと発表した。この研究は同大学脳科学研究教育センターの本間さと客員教授らによるもの。研究成果は、「Science Advances」に9月9日付けで掲載された。

睡眠・覚醒などのさまざまな生体機能には24時間周期のリズムが認められ、ヒトを含めた哺乳類ではこれらのリズムは視床下部視交叉上核に存在する生物時計により調節されている。生物時計は約1万個の神経細胞からできており、一つひとつの細胞が振動している。視交叉上核が時計として機能するためには、これらの多数の振動細胞を結合する神経ネットワークが必要生物時計は出生前から振動を開始する。

研究グループは以前、生後発達に伴い視交叉上核の神経ネットワークが質的に変化することを示し、この変化には時計遺伝子であるCryptochrom(Cry)が関係することを明らかにした。しかし、Cryが視交叉上核の神経ネットワークをどう変化させるのか、それにはどのような分子が関係するのかは不明だった。

小児期の行動リズム異常や睡眠障害を伴う発達障害の治療に期待

研究グループは、視交叉上核に発現する2つの神経ペプチド(VIP、AVP)に着目。Cry欠損マウスの視交叉上核の新生児期に見られる概日リズム発現に対するVIPの役割を明らかにする目的で、Cry欠損マウスとVIPの機能が消失したVIP受容体(VPAC2)欠損マウスから、その両方を欠損しているCry/VPAC2欠損マウスを作成し、ホタルの発光タンパク質であるルシフェラーゼを用いて、視交叉上核細胞の時計遺伝子Per2のタンパク質の概日変動を計測した。

その結果、Cry/VPAC2欠損マウスでは視交叉上核の個々の細胞リズムが脱同期し、全体での概日リズムは幼若マウスでも成獣でも消失していることがわかった。これらのマウスでも視交叉上核内にはいくつかの振動細胞のクラスターが残存していた。これらの結果から、Cry欠損マウスでは、新生児期には主にVIPを介した神経ネットワークの機能により神経核全体の概日リズムが形成されていることがわかったとしている。

次に、視交叉上核におけるAVPの役割を明らかにするため、Avpの発現を発光イメージングにより評価した。その結果、Cry欠損マウスの視交叉上核は新生児、成獣ともにAvpの発現量が低下しており、AVPを含む視交叉上核の移植で概日リズムが回復することがわかった。これらの結果は、成獣における概日リズムの消失は神経ネットワークを維持するAVP機能の喪失であることを示している。

生後発達における視交叉上核の神経ペプチドの機能を明らかにした初めての報告であり、小児期の行動リズム異常や睡眠障害を伴うことの多い発達障害の治療に結び付くことが期待されると、研究グループは述べている。

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