フェルラ酸の腸の運動に対する直接的な影響を、モルモットの回腸で検証
東邦大学は5月20日、米ぬかや穀類に含まれる天然成分「フェルラ酸(FA)」に、腸の筋肉の収縮を抑える作用があることを発見したと発表した。この研究は、同大薬学部薬理学教室の小原圭将准教授、吉岡健人講師、田中芳夫教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Pharmacological Sciences」に掲載されている。

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FAは植物由来のポリフェノールの一種で、特に米ぬかや小麦の外皮などに豊富に含まれている。これまでに、抗酸化作用、抗炎症作用、血管内皮保護作用、さらにはアルツハイマー病などの神経変性疾患に対する神経保護効果など、多彩な薬理作用が報告されてきた。しかし、腸の運動に対する直接的な影響については十分に検証されていなかった。
そこで研究グループは今回、腸の運動を制御している平滑筋に対するFAの影響を明らかにするため、モルモットの小腸(回腸)の平滑筋を用いた検討を行った。
FAが、収縮因子に引き起こされる回腸の収縮を「濃度依存的・可逆的」に抑制
その結果、FAは、アセチルコリン、ヒスタミン、セロトニン、プロスタグランジンF2αなどの収縮因子によって引き起こされる回腸の収縮を、濃度依存的かつ可逆的に抑制することを示した。また、各種収縮因子による回腸の収縮に対するFAの抑制効果を解析した結果、その作用が非競合的な阻害作用であることも明らかとなった。これは、FAが特定の受容体を直接ブロックするのではなく、共通の細胞内経路に作用することで収縮全体を抑えていることを意味する。
FAの腸管収縮に対する抑制作用、VDCCを介したCa2+の流入の抑制で生じると判明
実際に、脱分極によって電位依存性カルシウムチャネル(VDCC)を活性化させる高濃度カリウム刺激による収縮に対しても、FAは抑制効果を示した。また、ラット大動脈由来のA7r5細胞における細胞内Ca2+濃度測定実験においても、FAがVDCC活性化を介した細胞内のCa2+濃度の上昇を抑制することが確認された。
以上の結果から、FAの腸管の収縮に対する抑制作用は、主にVDCCを介したCa2+の流入の抑制によって生じることを突き止めた。
腸運動異常に対するFAの非薬物的な補助療法への応用に期待
FAは食品由来で安全性が高く、すでにサプリメントなどにも利用されている成分だ。同成果は、下痢型IBSなどの腸運動異常に対するFAの非薬物的な補助療法への応用の可能性を示すものと言える。一方、便秘型IBSや健常者では腸の運動を過度に抑える懸念もあるため、今後は摂取対象・用量・使用条件の最適化など、ヒトを対象とした検証が必要だ、と研究グループは述べている。
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