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アルツハイマー認知症の進行における悪循環メカニズムを解明、BACE1の異常が関与-NCNP

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2015年11月16日 AM11:45

アミロイドベータ蛋白を産生する働きを持つβセクレターゼ

)は11月12日、アルツハイマー病の発病や病態進行プロセスに、蛋白分解酵素「βセクレターゼ()」の異常が関わる悪循環メカニズムが潜んでいることを発見したと発表した。


画像はリリースより

この研究は、同センター神経研究所疾病研究第6部の荒木亘室長らと、筑波大学の玉岡晃教授、東京都医学総合研究所の亀谷富由樹博士らによるもの。研究成果は、国際科学雑誌「Molecular Brain」オンライン版に11月9日付で掲載された。

アルツハイマー認知症は、脳内に異常蛋白であるアミロイドベータ蛋白(Aβ)が蓄積して発病することが知られている。特に、最近の診断技術の進歩により、発病の10~20年前からAβの蓄積が始まっており、次第にその程度が増悪していくことがわかってきていた。Aβは正常でも神経細胞から産生されているが、これがどのように蓄積が始まり進行していくのかについては、いまだ十分な解明がなされていなかった。

一方、Aβの前駆物質であるアミロイド前駆体を切断して、Aβを産生する働きを持つBACE1という蛋白分解酵素の発現がアルツハイマー病の脳で上昇していることから、病態との関連が示唆されていた。しかし、この上昇のメカニズムについても、詳しいことは分かっていなかった。

Aβの集合体が神経細胞に作用、神経突起部でBACE1が上昇

研究グループは、アルツハイマー認知症の病態を反映している神経細胞モデルを使って、AβとBACE1の関係について研究を行った。その結果、Aβの分子が集合したもの(Aβオリゴマー)で神経細胞を刺激すると、細胞障害性の変化が起こるとともに、BACE1のレベルが増加することが示唆されたという。そしてその増加は、神経細胞の突起部分で顕著に起こっていることを初めて突き止めた。この発見から、アルツハイマー病では、Aβの集合体が神経細胞に作用し、神経突起部でBACE1の上昇をきたすこと、その結果、BACE1の活性が上がり、より多くのAβが産生されるようになる悪循環メカニズムが形成されていることが判明したという。

この悪循環のメカニズムは、アルツハイマー病の発病のプロセスや、病状の進行に関わっていることが考えられる。また、治療の観点からも、きわめて重要な知見であるとして、今後の研究に期待が寄せられている。

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