医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 末梢神経の髄鞘形成における新たな仕組みを解明-東大

末梢神経の髄鞘形成における新たな仕組みを解明-東大

読了時間:約 1分11秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2015年09月16日 PM12:30

髄鞘形成におけるカルシウムシグナルの重要性が明らかに

東京大学は9月11日、同大大学院医学系研究科 機能生物学専攻 細胞分子薬理学分野の飯野正光教授らの研究グループが、感覚や運動の高速な情報伝達に重要な役割を果たす末梢神経の髄鞘形成における新たな仕組みを解明したと発表した。この研究成果は、米科学雑誌「Cell Reports」オンライン版に9月10日付けで掲載されている。


画像はリリースより

身体の中で、感覚や運動の情報処理は、末梢神経による高速な電気信号の伝達により達成されている。この高速な情報伝達に重要な役割を果たしているのが、末梢神経の軸索の周りに形成される髄鞘と呼ばれる被覆だ。末梢神経における髄鞘は、シュワン細胞と呼ばれる細胞が軸索の周りを何重にも取り巻くことで形成されるが、この過程では多量のエネルギーを必要とすることが知られている。しかしながら、髄鞘形成を駆動するためのエネルギー産生が、シュワン細胞においてどのように制御されているかは不明だった。

髄鞘の異常を伴う病気のメカニズムの解明や創薬に期待

研究グループは、髄鞘形成において、シュワン細胞における細胞内カルシウムイオン濃度の上昇 (カルシウムシグナル)が、髄鞘形成におけるエネルギー産生において重要な役割を果たしていることを発見した。

シュワン細胞は、電気活動を行なっている軸索からプリン作動性シグナルを受け取った後に、カルシウムシグナルをミトコンドリアの中へ伝えることでエネルギーの産生を促進し、髄鞘形成を駆動していることが、実験結果から明らかになったという。

末梢神経の伝導に異常が起こると、感覚や運動機能が低下し、生活に大きな支障をきたす。しかし、その原因は不明な点が多く、治療法も確立していないのが現状だ。今回の成果は、そのような病気のメカニズムの解明や新たな創薬ターゲットの発見に貢献することが期待されると、研究グループは述べている。

▼関連リンク
東京大学 プレスリリース

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • OTULIN関連自己炎症症候群の常染色体顕性遺伝形式発症を確認、世界初-横浜市大ほか
  • 膵がん、線維化形成に関与するタンパク質ROCK2を同定-岡山大ほか
  • EYS関連網膜色素変性に視細胞変性への光暴露が関与、ヒトiPS細胞で解明-理研ほか
  • NGLY1欠損症、オキシトシン治療でモデルマウスのけいれん様症状抑制-理研ほか
  • 汗孔角化症、FDFT1遺伝子のエピゲノム異常が発症に関わることを発見-神戸大ほか