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インスリンの求心性迷走神経活性化作用をグレリンが抑制-自治医科大

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2015年07月10日 PM12:15

インスリンとグレリンの拮抗作用関係が明らかに

自治医科大学は7月8日、同大学統合生理学部門の岩﨑有作講師、矢田俊彦教授らのグループがマウスを使った実験において、インスリンの求心性迷走神経活性化作用をグレリンが抑制することを発見したと発表した。

求心性迷走神経は、食事によって分泌が変動する消化管・膵ホルモンを受容し、その情報を脳へ伝達して、摂食やエネルギー代謝を調節している。同グループはこれまでに、食後に分泌されるインスリンが求心性迷走神経を直接活性化することを見出し、この作用が満腹感創出に関与することを示唆していた。

胃ホルモンのグレリンは、インスリンとは反対に、空腹時に分泌が亢進して食欲を増進させるホルモン。インスリンとグレリンは分泌と作用の双方で相互に拮抗し、グレリンは膵β細胞からのインスリン分泌を抑制し、インスリンはグレリンによる摂食亢進性視床下部NPYニューロン活性化を抑制することが知られていた。

迷走神経レベルで摂食・エネルギー代謝を抑制している可能性

今回、同グループが行った研究では、マウスから単離した単一求心性迷走神経細胞(NGニューロン)において、インスリン投与は約10%前後のNGニューロンの細胞内Ca2+濃度([Ca2+]i)を増加させた。このインスリン応答性NGニューロンにおいて、グレリンの単独投与は [Ca2+]iの基礎値には影響を与えなかったが、インスリン誘発[Ca2+]i上昇作用を有意に抑制したという。

このグレリンの抑制作用はグレリン受容体GHSRを介することが薬理実験から示された。さらに、インスリン応答NGニューロンの過半数は摂食抑制性消化管ホルモンのコレシストキン(CCK)に応答するが、グレリンはCCK誘発[Ca2+]i上昇に影響を与えなかったことから、インスリン作用を特異的に抑制することが明らかになったという。

この迷走神経レベルでのインスリン・グレリンの拮抗作用は、「空腹時のグレリン有意な状態」と「食後のインスリン有意な状態」を迷走神経レベルで効率的に受容して脳に伝え、摂食・エネルギー代謝を制御している可能性が考えられるとしている。

なお、同研究成果は、スコットランド学術雑誌「Neuropeptides」に、Articles in pressとして6月14日付でオンライン掲載されている。

▼関連リンク
自治医科大学 プレスリリース

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