医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > アルツハイマー脳の病理変化と神経活動の関係、光遺伝学を用いて実証-東大

アルツハイマー脳の病理変化と神経活動の関係、光遺伝学を用いて実証-東大

読了時間:約 1分14秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2015年05月08日 PM01:00

認知症の原因となるアミロイドβの蓄積

東京大学は5月1日、脳における神経活動とアルツハイマー病との関係を、光遺伝学を用いた研究で明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科・神経病理学分野の岩坪威教授らによるもの。研究成果は、米科学雑誌「Cell Reports」に月30日付けで掲載されている。


画像はリリースより

認知症の症状が生じる原因は、脳内でアミロイドβ(Aβ)と呼ばれるタンパク質の断片が「老人斑」として細胞の外に溜まることと考えられている。しかし、このAβがどのようにして神経細胞から放出され、溜まってゆくのかは、十分に分かっていなかった。アルツハイマー病の脳でAβが早くから溜まりやすい場所は、健康時から神経活動の高い部位に一致することが、最新の画像診断法を用いて判明していたが、これを直接証明した研究はなかったという。

神経活動を光照射で制御する「光遺伝学」技術をマウスに応用

そこで研究グループは、遺伝子操作により「チャネルロドプシン」という分子を発現させた神経細胞に光を照射することによって神経活動を高める「光遺伝学」と呼ばれる方法を応用。アルツハイマー病モデルマウス「APPトランスジェニックマウス」の脳における神経活動を、この光遺伝学により制御した。

約5か月間にわたって、このマウスに連日1回ずつ光刺激を与え続け、海馬のAβ蓄積量を計量・評価したところ、マウスの海馬のAβ蓄積面積は約2.5倍に増加することが分かったという。これによって、アルツハイマー病の原因となるAβの蓄積が、長期間に及ぶ神経活動の亢進によって増大することが初めて実証された。

今後、アルツハイマー病を理解し、予防法を科学的に追求するにあたって、神経活動や脳機能との関係は、ますます重要な課題となるものと考えられる。今回の研究成果は、アルツハイマー病の予防・治療を進める上で、神経活動をどのように整えるのが有効かについての手がかりとして重要な手がかりをもたらすものとして期待される。

▼外部リンク
東京大学 プレスリリース

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 肝線維化の治療薬候補を同定、iPS細胞から誘導の肝星細胞で-東大ほか
  • 「ストレス造血時」における造血幹細胞の代謝調節を解明-東北大ほか
  • 食道扁平上皮がんで高頻度のNRF2変異、がん化促進の仕組みを解明-東北大ほか
  • 熱中症搬送者、2040年には日本の都市圏で2倍増の可能性-名工大ほか
  • 日本人がアフターコロナでもマスク着用を続けるのは「自分がしたいから」-阪大ほか