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多動障害や社会行動異常に関わる脳内カテコールアミン量の制御因子を発見-理研

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2015年04月16日 PM07:00

脳内の神経伝達物質による制御機構を研究

理化学研究所は4月14日、多動障害や社会行動の異常を抑える新しい分子機構を発見したと発表した。この研究は、同研究所脳科学総合研究センター発生神経生物研究チームの御子柴克彦チームリーダー、河合克宏研究員、藤田保健衛生大学総合医科学研究所システム医科学研究部門の宮川剛教授、昌子浩孝研究員らの共同研究チームによるもの。研究成果は、米国アカデミー紀要「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」オンライン版に、4月13日付けで掲載されている。


画像はプレスリリースより

人間の気分や行動は、脳内で働くモノアミンと呼ばれる神経伝達物質に制御されている。このモノアミンの中でもドーパミンやノルアドレナリンといったカテコールアミンは、注意力や衝動性の制御に関わっており、その異常は多くの精神神経疾患で見られる多動障害や社会行動の異常を引き起こす原因の1つとして考えられている。しかしながら、脳内のカテコールアミン量の恒常性を維持する機構には、解明されていない部分が多々あった。

アービットが脳内でCaMKIIαの活性を抑制、カテコールアミン量を維持

研究チームは今回、細胞内カルシウムチャネルの制御因子である「アービット(IRBIT)」に着目。アービットは電解質輸送やゲルの安定化など、多様な生命現象に寄与することが明らかになっているが、最も多く存在するという脳神経系における機能は不明なままだった。同研究チームは脳神経系におけるアービットの機能を解明するため、新たなターゲット分子の同定と機能解析を試みたという。

マウスによる実験では、脳内にアービットが存在しないマウスはα型カルシウムカルモジュリン依存性キナーゼII(CaMKIIα)が異常に活性化。ドーパミン産生時の活性化速度を決めている酵素「チロシンヒドロキシラーゼ」のリン酸化を促進して、マウス脳内のドーパミン量を増化させることが分かった。さらに、アービットを欠損させたマウスの行動を解析した結果、多動障害や社会行動の異常を示すことも明らかになったという。こうした結果は、アービットが脳内でCaMKIIαの活性を抑制することで、間接的にチロシンヒドロキシラーゼの活性を制御し、脳内のカテコールアミンを適切な量に保っていることを示している。

今後、ヒトにおいてアービット遺伝子の変異と多動障害や社会行動異常との関連を解明していくことができれば、精神神経疾患の治療や創薬などの研究が進展すると期待できる。

▼外部リンク
理化学研究所 プレスリリース

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