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理研 成体脳を透明化し1細胞解像度で観察可能とする新技術を開発

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2014年05月01日 AM06:05

アミノアルコールが成体脳の透明化を促進、「」技術を開発

独立行政法人 理化学研究所と独立行政法人科学技術振興機構は4月18日、脳全体の遺伝子の動きやネットワーク構造を3次元データとして取得し、定量的に比較することを可能にする新基盤技術「CUBIC」を開発したと発表した。この技術を用い、成体マウスと小型のサルの脳を透明化し、1細胞解像度で観察することにも成功している。


(画像はプレスリリースより)

これは、理化学研究所生命システム研究センター合成生物学研究グループと、理化学研究所 発生・再生科学総合研究センターシステムバイオロジー研究プロジェクトの上田泰己グループディレクターをはじめとする複数の研究員による研究グループの成果という。なお、この研究成果は米科学雑誌「Cell」の4月24日号にも掲載されている。

1細胞解像度での全脳蛍光イメージング法を実現

神経細胞が複雑なネットワークを構成し、さまざまな生体機能をコントロールしている脳の機能を理解するには、システム論的に理解するためのイメージング技術の開発が欠かせない。上田泰己グループディレクターらは、こうしたシステム生物学的アプローチで、細胞や組織内の生命システム、および個体レベルの生命現象原理の解明につながる技術開発を進めているという。

今回、研究グループは新たに開発した化合物スクリーニング法によって、40種類の化合物を探索。アミノアルコールが成体脳の尿素処理による透明化を促進することを発見したという。

この発見により、これまで難易度の高かった成体マウスの全脳をより高度に透明化する試薬の作製に成功。脳内の構造や遺伝子発現の様子を1細胞解像度で3次元イメージとして取得したという。研究グループはこれら一連の技術を「CUBIC」と名付けた。

「個体レベルのシステム生物学」の実現に前進

このCUBICにより、情報科学的な方法を応用した定量的な比較解析が可能となったとしている。CUBICはマウス脳だけでなく、小型のサルの脳にも適用可能で、遺伝学的に組み込んだ蛍光タンパク質を検出するだけではなく、免疫組織化学的な解析にも適応できるという。

プレスリリースでは

この技術の利用と発展により、個体レベルの生命現象とその動作原理を対象とする「個体レベルのシステム生物学」の実現に1歩近づき、生物学のみならず、医学分野においても大きく貢献すると期待できます。(独立行政法人科学技術振興機構 プレスリリースより引用)

と述べられている。(紫音 裕)

▼外部リンク

独立行政法人 理化学研究所/科学技術振興機構 プレスリリース
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20140418/

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