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東大 アポトーシス欠損胎児の外脳症は、神経管閉鎖不全が原因と発表

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2014年01月06日 PM03:00

従来の教科書記載に変更を促す研究結果

東京大学大学院 薬学系研究科遺伝学教室の野々村恵子元特任研究員、山口良文助教、三浦正幸教授らは2013年12月24日、アポトーシス欠損胎児(アポトーシスの実行に関わる遺伝子が壊れたためにアポトーシスが起こらないマウス胎児)の脳を調べ、これらの胎児で見られる外脳症の原因が、神経管閉鎖の不全であることを明らかにしたと発表した。

この発見は、アポトーシス欠損胎児の脳形態異常の原因は細胞数の過剰増加による肥大であると説明する、従来の教科書の記載(S. Gilbert, Developmental Biology,10th ed., 2013)に変更を促すものとしている。

(この画像はイメージです)

司令塔細胞の除去にアポトーシス

今回の研究では、脳初期発生で集中的にアポトーシスが観察される場所が、周りの多数の細胞に指令を出すシグナリングセンターと呼ばれる司令塔の細胞集団であることが判明。発生の様々な局面で見られる司令塔の細胞集団から放出される、体作りのための指令は刻々と変化しているが、指令の切り替え、特に不要となった指令の除去がどのように行われているのか、その詳細はこれまで分かっていなかったという。

そこで研究チームは複数の実験によって、胎児期の脳の最前端形成の司令として働くFGF8タンパク質を産生する司令塔の細胞集団の一部が、アポトーシスによって除去されることを解明。FGF8を産生する司令塔細胞のアポトーシスが阻害されると、司令塔細胞自身の増殖が止まった状態で過剰に残ったという。

さらに司令塔の細胞集団が作り出すFGF8タンパク質が、本来なら存在しない部位にまで分布し、脳の領域化異常を生じさせることが判明。これらの結果から、正常な脳の形成に必要な仕組みとして、司令塔の細胞集団の除去にアポトーシスが用いられていることが明らかになったとしている。

その他の器官でも用いられている可能性

脳最前端でのアポトーシスによる司令塔の細胞集団の細胞数調節と指令シグナルの切り替えという仕組みは、その他の器官でも体作りの指令を円滑に切り替える方法として、共通に用いられている可能性があるという。また、今回の結果から、細胞死不全による神経管閉鎖の遅延、指令分子の発現の乱れが神経管閉鎖異常の原因と示唆されたことから、細胞死調節という視点からの病態解明が期待されるという。(たなか牡丹)

▼外部リンク
東京大学 プレスリリース
http://www.u-tokyo.ac.jp/public/

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