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骨髄や血管内で発生する血液の乱流が巨核球からの血小板生成を促進-CiRA

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2018年07月18日 AM11:45

乱流条件を設定可能な縦型培養装置を開発

京都大学iPS細胞研究所()は7月13日、骨髄や血管内で発生する物理的な乱流が血小板生成の鍵であることを突き止め、必要な乱流条件を設定可能な縦型培養装置を開発したと発表した。この研究は、CiRAの伊東幸敬研究生(兼、株式会社メガカリオン主任研究員)、中村壮特命助教、江藤浩之教授(兼、千葉大学再生治療学研究センター長)らと、、名古屋大学、、佐竹化学機械工業株式会社、株式会社メガカリオンとの共同研究によるもの。研究成果は、米科学誌「Cell」でオンライン公開された。


画像はリリースより

近年、献血にとって代わる生産システムとして、ヒトiPS細胞を用いた血小板作製技術が期待されている。研究グループは、2010年にヒトiPS細胞から血小板が生産できることを発表。輸血に必要なスケールでの血小板作製技術を開発するため、血小板を生み出す巨核球に着目し、2014年にヒトiPS細胞から自己複製が可能な巨核球を誘導することに成功し、生体外で凍結保存も可能な不死化巨核球株として作製する方法を確立した。

しかし、ヒト生体を循環する血小板に近い高い機能を持つ千億個単位の血小板を、これまで生体外で作製することに世界中で成功した例はなかった。

8Lスケール装置から1千億個以上の血小板の作製に成功

今回の研究では、マウスの生体内観察により、血液の乱流が巨核球から血小板の生成を促進させることが判明。研究グループは、必要な乱流条件を設定可能な縦型培養する装置を開発し、同定した物理パラメータを調整することで、8Lスケール装置から高品質で1千億個以上の血小板を作製することに成功した。

また、縦型培養装置から血小板のみを分離・濃縮し、試験管内で血液凝固因子であるトロンビンとコラーゲンを添加したところ、血小板の凝集を確認した。また、作製した血小板をマウスとウサギの2つの動物モデルに輸血し、献血由来の血小板の機能と比較したところ、両者ともに生体内を循環。止血などが行われていることを確認。これらの結果から、作製した血小板の輸血用血小板としての機能が確かめられたという。さらに、乱流に伴い巨核球からIGFBP2、MIF、NRDCという可溶性因子が放出され、血小板生成を促進していることも判明したとしている。

今回の研究の成果である、縦型培養装置の開発と、血小板産生量に関わる2つの物理パラメータの同定は、今後、より大規模な血小板生産のための新たな培養装置の開発に役立つと考えられる。さらに、血小板生成メカニズム一端の解明と生体外における血小板作製法の開発は、これからの血小板生成の研究、輸血医療、細胞治療や再生医療に影響をもたらすことが期待される、と研究グループは述べている。

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