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婚姻状況の変化と脳卒中発症リスクを検証した多目的コホート研究結果を発表—国がん

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2016年03月31日 PM12:00

男女約5万人を対象に、婚姻状況の変化と脳卒中発症との関連を調査

国立がん研究センターの予防研究グループは3月28日、婚姻状況の変化と脳卒中発症リスクとを関連付ける多目的コホート研究(JPHC研究)の結果を発表した。


画像はリリースより

JPHC研究は、生活習慣とさまざまな病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防や健康寿命の延伸に役立てるための研究。今回発表されたのは、1990年および1993年に、全国9保健所管内にて研究開始時に既婚だった40~69歳の男女約5万人を対象として、平均約15年間追跡した調査結果をまとめたもの。婚姻状況の変化(既婚から非婚)と脳卒中発症との関連を調べた。

婚姻状況は健康に影響を与える重要な要因のひとつとされ、一般に、既婚者は非婚者(離別・死別)と比較して健康状態が良いことが報告されている。一方、婚姻状況の変化は循環器疾患の発症リスクを上昇させることも報告されているが、脳卒中発症リスクとの関連、特に、脳卒中タイプ別の検討は、これまでほとんど行われていなかった。また、婚姻状況の変化は居住形態や社会経済状況などの生活の変化も伴うため、健康への影響を変化させる可能性が考えられるという。

婚姻状況変化がある人ほど、脳卒中を発症するリスクが高い傾向に

今回の研究では、既婚から非婚への婚姻状況の変化が、その後の脳卒中発症のリスクにどのような影響を与えているかを脳卒中タイプ別に分析。その関連が居住形態や仕事の有無によって変化するかどうかを検討した。調査を開始する5年前に配偶者と同居していた人のみを対象とし、調査開始時の婚姻状況から婚姻状況変化(/配偶者と同居 → /配偶者と同居していない)の有無を特定し、その後の脳卒中発症のリスクを算定した。

その結果、平均約15年間の追跡期間中に、2,134人の脳卒中発症が確認された。調査開始時期から婚姻状況の変化がある人ほど、脳卒中を発症するリスクが高い傾向が確認され、特に、脳出血のリスクで強い関連がみられたという。なお、これらの関連に男女差は見られなかった。

研究グループは、婚姻状況の変化が脳卒中発症リスクを上昇させる理由として、配偶者を失うことによる生活習慣や精神状態の変化があるのでは、と述べている。実際、先行研究により、配偶者を失うと飲酒量が増えたり、野菜や果物の摂取が減ったりするような変化があることが報告されており、また、心理的ストレスレベルが上昇し、生活を楽しめなくなる傾向にあるとも言われている。これらの婚姻状況の変化により起こる様々な変化が、脳卒中発症リスクを上昇させているのではないかと考えられる。

今回の研究により、今後、脳卒中発症におけるハイリスク者を把握する際、患者をとりまく社会環境も考慮する必要があることを示されたとしている。

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