CT検査・治療時の姿勢は患者にとって負担であり、調整は医療従事者の手間でもあった
岡山大学は6月17日、CT検査・治療時の患者負担を軽減する「腹臥位用胸部クッション」を開発したと発表した。この研究は、同大学術研究院 医療開発領域 放射線科(岡山大学病院 IVRセンター)馬越紀行助教らの研究グループと、アズワン株式会社との共同研究によるもの。

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CT撮影をしながら針やカテーテルを挿入する検査や治療では、患者は腹臥位(うつ伏せ)で両腕を頭方向に挙げた姿勢を長時間維持する場合がある。この姿勢は、肩や胸腹部などに負担がかかり、肩痛や胸腹部の不快感を訴えることがあった。
さらに、CT装置や寝台の仕様がメーカーによって異なるため、看護師は複数の枕やクッションを組み合わせ、患者に適した姿勢を試行錯誤しながら調整する必要があった。この調整作業は手間がかかるだけでなく、患者ごとに異なる対応が求められるため、医療従事者の負担となっていた。
観察やヒアリングを重ね、医療現場のニーズに応える「腹臥位用胸部クッション」を開発
これらの課題解決のため、研究グループは患者の快適性向上を目的としたクッションの開発に着手。そして、アズワンとの共同研究を通じ、医療現場のニーズに応える腹臥位用胸部クッションを開発した。
CT検査や治療時の腹臥位姿勢は、患者の肩や肘への負担が大きく、特に高齢者や体力の低下した患者にとっては負担が大きい。医療現場での観察やヒアリングを重ね、試作と改良を繰り返すことで、快適性を向上させるクッションが完成。腹臥位で、上肢の挙上をしやすい形状と高さに設計されている。
腹部を圧迫しない長さであるため、不快感なく長時間の検査・治療が可能。内部のウレタンは、耐圧分散しやすいソフトクッションを使用している。また、胸部に窪みがあり伸縮性に富んだカバーを使用しているため、バストの圧迫感を軽減する。カバーは、耐アルコール・耐次亜塩素酸であるため、繰り返しの使用が可能だ。長時間の検査・治療でも快適に過ごせるよう設計されているため、患者の負担軽減だけでなく、医療従事者の業務効率の向上にも貢献すると思われる。
患者の身体的・心理的負担を軽減し、医療現場での業務効率向上にも貢献
今回の研究で開発された腹臥位用胸部クッションにより、腹臥位姿勢での患者の快適性の向上が期待される。
「特に、高齢者や体力の低下した患者にとって優しい仕様となっており、快適な姿勢維持は、身体的負担の軽減だけでなく、心理的安心にも寄与するとともに、医療現場での業務効率向上にも貢献し、スムーズな検査・治療の実施をサポートする」と、研究グループは述べている。
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