脊髄運動ニューロンから筋肉への指令頻度、発育発達に伴いどう変化するのか?
岩手大学は11月26日、6~12歳の小児と若年成人を対象に、力を調節する際の「運動単位(筋肉を制御する神経と筋線維のセット)」の活動パターンを比較した結果、小児は成人よりも高い頻度で神経指令(発火)を送っていることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大教育学部の奥平柾道講師、中京大学スポーツ科学部の渡邊航平教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Muscle & Nerve」に掲載されている。

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子どもと大人の筋力の違いは、単に筋の大きさだけでなく、神経系の成熟度も大きく関わっている。これまで、最大筋力を発揮する際の神経活動については研究が進んでいたが、日常生活やスポーツ動作で重要な力の調節(最大下強度での力発揮)を、子どもがどのような神経戦略で行っているのかの詳細は不明だった。特に、脊髄の運動ニューロンが筋肉へ送る指令の頻度(発火頻度)が、発育発達に伴いどのように変化するのかは未解明だった。
小児と若年成人の筋肉の電気信号を記録、運動単位の発火パターンを追跡・解析
研究では、6~12歳の健常な小児18人と若年成人18人を対象に、膝を伸ばす動作(膝伸展)において、徐々に力を強めていくランプ収縮課題(最大筋力の50%まで)を行ってもらった。この際、外側広筋に64個の電極を持つシート(高密度表面筋電図)を貼付し、筋肉の電気活動を記録。記録された信号を数学的処理により分解し、個々の運動単位の発火パターンを追跡・解析した。
小児は成人よりも、ほぼ全ての力発揮レベルにおいて運動単位の発火頻度「高」
解析の結果、小児は成人よりも、ほぼ全ての力発揮レベルにおいて運動単位の発火頻度が高いことが明らかになった。また、力が強まるにつれて発火頻度をどう上昇させるかという制御戦略においても、小児は初期に急激に頻度を高め、その後頭打ちになる(飽和する)という、成人とは異なる特徴を示した。これは成人に比べて筋肉の収縮反応が未熟な小児において、スムーズな力発揮を行うために神経系が適応した結果であると考えられる。
子どもの神経発達特性を考慮した効果的な運動プログラムなどの開発に向け重要な知見
今回の研究で得られた健常児の運動単位発火特性は、神経筋疾患を持つ小児の機能評価を行う際の重要な参照データとなる。また、小児が高い発火頻度に依存して力を発揮しているという事実は、成人に比べて神経的な疲労が生じやすい可能性も示唆している。
「今後はこれらの特性を踏まえ、発育期の子どもにとって過度な負担がなく、かつ神経系の発達を促すような最適な運動指導やトレーニング処方の開発へと展開していく予定だ」と、研究グループは述べている。
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