ワーク・エンゲイジメントの向上を図るスマホアプリ「WEDiary」を開発
慶應義塾大学は10月16日、日々の業務を振り返りポジティブな出来事を記録するスマートフォンアプリ「Work Engagement Diary(以下、WEDiary(ウィダイアリー))を開発し、その効果によってワーク・エンゲイジメントが向上することを実証したと発表した。この研究は、同大総合政策学部の島津明人教授と公益財団法人日本生産性本部の研究グループによるもの。研究成果は、「JMIR mHealth and uHealth」に掲載されている。

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少子高齢化が進み、労働力人口が減少する中、働く人一人ひとりが健康で生き生きと働くことが、これまで以上に大切になっている。ワーク・エンゲイジメントは労働者の健康増進と生産性向上の両立につながる要素として、近年、特に注目されている。
これまで、ワーク・エンゲイジメントの向上のためにさまざまな支援プログラムが開発されてきた。これらは、集合型の研修や対面での個別介入が中心であり、時間や場所の制約、実施スタッフの確保などのコスト面で、多くの課題が残されていた。
そこで研究グループは、労働者自身がスマートフォンアプリで簡便に記録できる「WEDiary」を新たに開発した。同アプリでは「ポジティブ・リフレクション」に着目し、日々の達成や前向きな体験を振り返ることで、ワーク・エンゲイジメントの向上を図る。
介入群は介入終了直後のワーク・エンゲイジメントが有意に向上、活力と熱意が改善
研究では、全国の20~59歳の日本人労働者600人を対象に、ランダム化比較試験(RCT)を実施した(介入群300人、待機群300人)。介入内容はWEDiaryを2週間利用(週の初めに目標を設定し、毎日就業後に「今日できたこと」を記録)とした。さらに仕事への活力・熱意を自己評価した。評価時点は介入前・介入終了直後・介入終了3週間後とし、主な評価指標には「日本版ユトレヒト・ワーク・エンゲイジメント尺度(UWES-J)」を使用した。
その結果、介入群は待機群に比べて、介入終了直後のワーク・エンゲイジメントが有意に向上。特に「活力(Vigor)、熱意(Dedication)、没頭(Absorption)」の3つの要素のうち、活力と熱意に改善がみられた。また、効果量は小さいものの、介入終了後3週間まで持続した。また、特に女性・大卒以上・ホワイトカラー・正規雇用者において効果が顕著であることがわかった。
引き続き、長期的な効果の検証や利用継続を促す工夫を検討する予定
同研究は、スマートフォンアプリを用いたポジティブ・リフレクション介入の有効性をRCTで実証した、きわめて先端的な研究と言える。シンプルな自己学習型のアプリを日常生活の中で活用することで、働く人々の活力や熱意が高まる可能性が示された。
「今後は、長期的な効果の検証や利用継続を促す工夫を検討する予定だ。仕事終わりのたった数分間で取り組めるシンプルで継続可能な方法を通じて、人々の健康と生産性の両方を向上させることを目指している」と、研究グループは述べている。
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