日本における「メンタルヘルス・ジェンダーギャップ」の実態は?
国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は9月30日、近年、思春期女子のメンタルヘルスが悪化し、男子との差(メンタルヘルス・ジェンダーギャップ)が拡大している現状を指摘したと発表した。この研究は、同センター精神保健研究所 行動医学研究部の成田瑞室長、キングス・カレッジ・ロンドンのGemma Knowles講師、東京都医学総合研究所社会健康医学研究センターの西田淳志センター長、山﨑修道副参事研究員、東京大学大学院医学系研究科の笠井清登教授(東京大学国際高等研究所ニューロインテリジェンス国際研究機構(WPI-IRCN)主任研究者)らの研究グループによるもの。研究成果は、「Nature Human Behaviour」に掲載されている。

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思春期の若者におけるメンタルヘルス問題は、世界各国で深刻化している。大規模な国際調査では、女子のメンタルヘルスの悪化によって、メンタルヘルス・ジェンダーギャップが拡大していることが示されている。こうした国際的な知見を踏まえ、日本における最新の動向を整理することが求められている。また、関連していると考えられる社会的要因を明らかにすることが期待される。
2024年に20歳未満女子の自殺者数が男子を上回り初の逆転
今回のまとめでは、日本の厚生労働省統計をもとに、2024年に20歳未満の女子の自殺者数が男子を初めて上回ったことが示された。女子は430人、男子370人であり、10年前の傾向(男子373人、女子165人)と逆転した。これは、日本における女子のメンタルヘルスの悪化が裏付けられた重要な事例であり、社会全体が直面する課題である。
女子のメンタルヘルス悪化、社会的要因と強い結びつきがあると推察
同論文では、このような傾向の背景に、従来のジェンダー規範に沿った期待に応えるだけではなく、社会的成功も同時に求められる二重のプレッシャー、インターネットの不適切利用、対面だけでなくインターネットを介した性的搾取、過剰なやせ願望、思春期の早期化など、複数の要因が複合的に関与している可能性を指摘した。
これまで十分に注目されてこなかった女子のメンタルヘルス悪化を、国際的な知見と国内の統計を組み合わせて提示したことは、社会としての対応を喚起する上で重要な意義を持つ。女子のメンタルヘルス悪化は、社会的要因と強く結びついていると考えられる。
若者の声を反映させながら、社会全体の連携による包括的な対応が必要
「今後は、示唆された要因を因果媒介分析や交互作用分析を用いて厳密に検討し、エビデンスに基づいた予防策や支援策につなげていく必要がある。若者自身の声を反映させながら、社会全体の連携による包括的な対応が求められる」と、研究グループは述べている。
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