進行が早い小細胞肺がん、体力低下患者に免疫療法を安全に使用できるか不明だった
新潟大学は9月29日、全身状態が不良で日常生活に制限のある小細胞肺がん患者においても、免疫チェックポイント阻害薬と抗がん薬の併用療法は、安全かつ有効であることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大医歯学総合病院呼吸器・感染症内科の才田優助教、渡部聡医学部准教授、菊地利明教授、順天堂大学医学部附属順天堂医院呼吸器内科の朝尾哲彦医師らの研究グループによるもの。研究成果は、「Lancet Respiratory Medicine」に掲載されている。

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小細胞肺がんは国内で約2万人が罹患するがんで、進行が早い一方、抗がん薬や放射線治療が効きやすい腫瘍である。進行に伴って体力が落ち治療が難しくなる患者が多く、免疫療法を安全かつ有効に使用できるかは不明であった。
PS2/3患者へのデュルバルマブ併用療法の効果を検証
今回の研究は、全身状態が不良な進展型小細胞肺がんに対する、デュルバルマブ(免疫チェックポイント阻害薬)+カルボプラチン+エトポシド併用療法の安全性と有効性を検証することを目的とした。強い副作用を避けるため、カルボプラチンとエトポシドを減量して開始し、副作用の程度に応じて各コース毎に用量を調整し、個々の患者に最適な投与量を決定した。研究は、北東日本研究機構(NEJSG)の所属施設による共同研究として実施された。
Performance Status(PS:日常生活活動度)は、全身状態の指標の1つで、患者の日常生活の制限の程度を示す。PS2は「歩行可能で、自分の身のまわりのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす。」、PS3は「限られた自分の身のまわりのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす。」と定義される。
導入療法完遂率と1年生存割合、ともに想定水準を上回る
今回の研究には、57人の患者(PS2:43人、PS3:14人)が参加した。
結果、参加者のうちPS2の26人(67%)、PS3の5人(50%)が導入療法を完了し、副作用により治療を中止したのは全体で12人(21%)にとどまった。がんが明らかに縮小した割合は51%だった。無増悪生存期間の中央値は4.7か月、全生存期間の中央値は全体で9.0か月、PS2では11.3か月と良好な結果となった。日常生活の制限は29人(55%)で改善した。
全身状態不良の患者へ、強度の高い化学免疫複合療法の選択肢が拡大
これらの結果から、全身状態が悪化した進展型小細胞肺がん患者においても、免疫チェックポイント阻害薬と抗がん薬の併用療法は、一定の安全性と有効性を示すことが明らかとなり、強度の高い初回治療の選択肢が広がった。
「今後は、より適切な治療選択ができるよう、長期に効果を維持できる患者や、副作用が強く出やすい患者の特徴を検討していく予定だ」と、研究グループは述べている。
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