血中アルブミン酸化還元バランスと運動効果の関連は未解明だった
順天堂大学は9月25日、血中アルブミン酸化還元バランスが中高年齢者の身体機能の変化を反映する有用な指標となる可能性を見いだしたと発表した。この研究は、同大大学院スポーツ健康科学研究科の町田修一教授らと森永乳業の共同研究によるもの。研究成果は、「Frontiers in Physiology」に掲載されている。

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加齢に伴う身体機能の衰えを予防するためには、適切な運動とタンパク質などの栄養摂取が重要である。アルブミンは血中で最も豊富なタンパク質であり、その濃度はタンパク質栄養状態の指標として活用されてきた。血中のアルブミンは「酸化型」と「還元型」に大別され、総アルブミンにおける還元型アルブミンの割合を「アルブミン酸化還元バランス」と呼ぶ。タンパク質栄養状態が悪化すると、還元型の割合が減少(相対的に酸化型の割合が増加)することが報告されており、アルブミン酸化還元バランスはアルブミン濃度よりも鋭敏なタンパク質栄養状態の指標であることが明らかとなってきた。一方で、血中アルブミン酸化還元バランスが運動によって得られる効果とどのように関連するかは不明であった。そこで今回の研究では、中高年齢者を対象に、血中アルブミン酸化還元バランスと運動の効果とその関連性を明らかにすることを目的とした。
40~80代を対象に運動前後の身体機能と血中のタンパク質栄養指標の関連を検証
同大ではこれまで、COI(センター・オブ・イノベーション)プロジェクトの一環として、運動器障害によって移動機能が低下した状態である「ロコモティブシンドローム」の予防・改善に効果的な運動プログラムの開発と社会実装に取り組んできた。今回の研究では、12週間の運動トレーニング教室へ参加した40代から80代の中高年齢者43人のデータを用い、トレーニング前後における身体機能(歩行速度)や血中のさまざまなタンパク質栄養状態の指標(血中アルブミン酸化還元バランス、アルブミン濃度、総タンパク質濃度、遊離アミノ酸濃度)との関連性を解析した。
「還元型」が多い人ほど歩くのが早く、増えた人ほど運動効果が大きい
その結果、血中アルブミン酸化還元バランスにおいて、還元型アルブミンの割合が高い人ほど歩行速度が速いことがわかった。
また、トレーニング前後の血中アルブミン酸化還元バランスにおいて、還元型アルブミンの割合が増加した人ほど、最大歩行速度の改善率が大きいことがわかった。
これらの結果から、血中アルブミン酸化還元バランスはタンパク質の栄養状態の指標としてだけでなく、中高年齢者の身体機能の変化を反映する指標である可能性が示された。
フレイル、サルコペニア早期発見に向けた新たな指標に
栄養不足や運動不足は、加齢に伴う身体機能や筋肉量が低下する状態である「フレイル」や「サルコペニア」につながり、転倒や介護が必要になるリスクを高めることが懸念されている。血中アルブミン酸化還元バランスは、これらのリスクを早期に捉える新しい指標として、栄養と運動の両面からの健康管理に役立つ可能性がある。
「今後は、この指標を活用した中高年齢者の健康状態の評価や栄養・運動指導への活用に向けた検討も進めていく」と、研究グループは述べている。
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