VKDの母体側リスク因子、従来は低栄養・消化器疾患に限定されていた
神戸大学は9月24日、母体の妊娠前肥満(BMI25以上)が、新生児におけるビタミンK欠乏(VKD)の独立した危険因子であることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科小児科学分野の増田祐大学院生、同大医学部附属病院総合周産期母子医療センターの芦名満理子助教、同大大学院医学研究科小児科学分野(こども急性疾患学部門)の藤岡一路特命教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Nutrition」に掲載されている。

画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)
新生児は本来ビタミンKが不足しやすく、重篤な頭蓋内出血などを引き起こすビタミンK欠乏性出血(VKDB)のリスクを抱えている。日本では、出生直後からのビタミンK投与が標準予防策だ。一方、母体側のリスク因子は「低栄養」「消化器疾患」といった栄養摂取不足や吸収不良に限られており、肥満はこれまで注目されていなかった。
ビタミンK欠乏64人/対照群128人で比較
今回の研究では、2018~2023年にかけて神戸大学医学部附属病院に入院した新生児2,694人のうち、出生当日にビタミンK欠乏の指標となる血清マーカー(PIVKA-II)を測定できた症例を解析した。その結果、64人がビタミンK欠乏(PIVKA-II 1,000 mAU/mL以上)に該当。同じ性別・在胎週数でマッチングした128人を対照群として比較した。
VKD新リスク因子として「妊娠前肥満」
解析の結果、母体の妊娠前肥満(BMI 25以上)は、低栄養や消化器疾患の既知のリスクと同様に、新生児ビタミンK欠乏の発症と有意に関連していた。多変量解析では、妊娠前肥満はオッズ比3.97(p<0.001)と独立した危険因子として抽出された。
脂肪組織にビタミンKが吸着・蓄積されやすく、胎児へ供給不足の可能性
肥満妊婦では脂肪組織にビタミンKが吸着・蓄積されやすく、胎児への供給が不足する可能性が示唆された。また、母体BMIと新生児血中PIVKA-II濃度には正の相関を認めた。
今後、多施設共同の前向き研究が必要
今回の研究は単施設・後方視的研究であるため、今後は多施設共同の前向き研究が必要である。肥満合併妊娠における母体ビタミンK管理(例:周産期での栄養評価や補充戦略)が、新生児VKDB予防に有効かどうかを検証することが期待される、と研究グループは述べている。
▼関連リンク
・神戸大学 プレスリリース


