コンディション管理に重要な「乳酸濃度」、測定には血液採取が必要だった
東海大学は9月10日、高強度運動後に分泌される「汗中乳酸濃度」と血液中の「血中乳酸濃度」との関連性を、非侵襲かつ連続的に計測できるウェアラブルデバイスを用いて世界で初めて統計的に検証したと発表した。この研究は、同大札幌キャンパス国際文化学部地域創造学科の服部正明特任教授を代表とする研究グループによるもの。研究成果は、「Open Access Journal of Sports Medicine」に掲載されている。

画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)
アスリートのコンディション管理やパフォーマンス向上において、血液中の「乳酸濃度」は重要な指標となる。しかし、従来の乳酸測定では、血液を採取する侵襲的な方法が一般的であった。この測定方法は痛みを伴うため、頻繁な測定が難しく、アスリートへの負担も大きいことが課題となっていた。
今回の研究では、この課題を解決するため、運動時の「汗」に含まれる乳酸に着目。株式会社グレースイメージングが世界で初めて開発した、汗中の乳酸値を計測できるウェアラブルデバイス「GSM-00013」を用いて、「汗中乳酸濃度」を連続的に計測し、血液採取を行わず血液中の乳酸を推定できる可能性を検証した。
汗と血液の乳酸変化を同時測定して比較
高強度運動を行ったアスリートを対象に、ウェアラブルデバイスで汗中乳酸と発汗量を連続的に計測すると同時に、血中乳酸値についても採血により随時測定を行った。このように「同時測定」を行うことで、汗と血液における乳酸動態を時間軸上で正確に比較することが可能となった。
汗中乳酸と発汗量データで、疲労度や代謝状況を把握できる可能性
データを時系列解析した結果、汗中乳酸と発汗量を組み合わせることで、一定のタイミングで血中乳酸の上昇を予測できることが統計的に示された。これは、非侵襲的な汗のデータだけで、アスリートの疲労度や代謝状況を把握できる可能性を示唆するものである。
非侵襲の乳酸モニタリング、アスリート支援に幅広く応用へ
今回の研究は、血液採取を伴わない乳酸モニタリングが現実的であることを示した。これにより、運動負荷の最適化、競技力向上、疲労管理など、アスリート支援に幅広く応用できると期待される。
「今回の研究はパイロットスタディとして実施され、被験者数は限定的である。今後は、より多くの被験者を対象に、運動種目・性別・環境条件を拡大してデータを蓄積し、アルゴリズムの精度向上と現場での実用化に向けた検証を進めていく。将来的には、汗を活用してアスリートの骨格筋代謝能力を非侵襲的に評価する、スポーツ科学の新しいツールとしての実用化を目指す」と、研究グループは述べている。
▼関連リンク
・東海大学 ニュース


