DNA修復機構の異常を原因とするXP、これまで8つの相補性群に分類されてきた
名古屋大学は9月10日、指定難病のひとつである色素性乾皮症(xeroderma pigmentosum:XP)の新たな相補性群XP-Jと責任遺伝子GTF2H4/XPJを特定したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科附属神経疾患・腫瘍分子医学研究センター分子遺伝学の中沢由華教授、環境医学研究所発生遺伝分野/難病ゲノム解析センターの荻朋男教授、Rare Disease UK(英国)のHiva Fassihi医師、Shehla Mohammed医師、Heather Faucett技師、Alan Lehmann教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Clinical Investigation(JCI)」にオンライン掲載されている。

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XP(指定難病159)は、DNA修復機構の異常により、日光曝露部の皮膚がん発症リスクが高まる遺伝性難治性疾患である。特に日本および欧州、米国で発症リスクが高いことが知られている。これまでに、XPA~XPGおよびPOLHの8つの遺伝子の異常がXP発症に関わることが報告されており、それぞれ、XP-A~XP-GおよびXP-variant(XP-V)群に分類される。
典型的なXPの症状示すが、原因遺伝子変異不明の患者細胞を解析
研究グループは、DNA修復機構・DNA損傷応答機構の異常により発症するゲノム不安定性疾患群を対象に、その疾患原因変異の特定や疾患発症メカニズムの解明、関連遺伝子の機能解析によるDNA修復機構の理解と疾患の分子病態解明に取り組んでいる。今回、欧州のXPを疑われた症例(XP140BR:6歳女児)について、疾患原因変異探索を実施した。
本症例は高い紫外線感受性を示し、色素斑や軽度の発育発達異常も確認されており、典型的なXPが疑われていたが原因遺伝子変異は不明だった。XP患者では、紫外線誘発DNA損傷の修復活性が低下している。ゲノム全体で働くヌクレオチド除去修復機構(GG-NER)は、XP-Vを除く全てのXPで異常が認められる。一方、転写と共役したヌクレオチド除去修復機構(TC-NER)は、XP-CとXP-Eを除くXPで異常が認められる。GG-NERとTC-NERの活性を調べることで、原因となる遺伝子の絞り込みができる。そこで、患者由来細胞(XP140BR)を用いて、GG-NERとTC-NERの活性を調査したところ、いずれも低下していることがわかった。
TFIIH複合体に関連するGTF2H4遺伝子異常が判明、9番目の相補性群に分類
次に、XPの発症に関与することが知られる既知のNER関連遺伝子について、ウイルス相補性試験を実施したが、既知の遺伝子の異常が原因ではないことが示された。そこで、全ゲノム解析を実施し、疾患原因変異の探索を試みたところ、TFIIH複合体の構成因子の1つであるp52をコードする遺伝子GTF2H4上に原因変異を特定した。本変異が疾患原因であることを確認するため、XP140BR細胞にGTF2H4のcDNAを強制発現させ、修復活性を評価したところ(ウイルス相補性試験)、低下していた修復活性が回復することが確認された。
さらに、p52タンパク質の発現量を確認したところ、フレームシフト変異を持つアリルに由来するタンパク質が低量ながら発現していること、TFIIH複合体の構成因子(XPB、p62、XPDなど)が分解していることも確認された。以上の結果から、研究グループは、TFIIH複合体p52タンパク質をコードするGTF2H4遺伝子の異常によって発症するXPを、9番目のXP相補性群XP-Jとし、遺伝子の通称名をXPJとして報告した。
他のTFIIH複合体関連疾患についても分子病態理解につながる可能性
TFIIH複合体構成タンパク質の先天的な異常では、XPのほか、早期老化や進行性の神経変性などを示すコケイン症候群(Cockayne syndrome:CS)や、発育発達異常や毛髪異常などを示すトリコチオジストロフィー(Trichothiodystrophy:TTD)なども発症することが知られている。今回の研究で、新たにTFIIH複合体の構成因子p52の異常が、XP発症に関わること、一方、CSやTTDの症状は認められないことが示された。「GTF2H4/XPJ遺伝子の機能解析が進み、さらに疾患モデル生物の評価が進展することで、XP、CS、TTDの発症メカニズムや、より詳細な分子病態の理解につながると期待される」と、研究グループは述べている。
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・名古屋大学 研究成果発信サイト


