頭痛や腹痛などの身体症状の数／頻度と、抑うつ症状の関連は？

国立成育医療研究センターは9月2日、全国の10～15歳の小児を対象とした大規模調査を解析し、身体症状がどのくらいの「頻度」や「数」で現れる場合に抑うつ症状と関連するのかを調査し、その結果を発表した。この研究は、同センター教育研修センターの新野一眞氏、および女性のライフコース疫学研究室の石塚一枝氏、社会医学研究部のAurelie Piedvache氏、森崎菜穂氏らの研究グループによるもの。研究成果は、「European Journal of Pediatrics」に掲載されている。

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思春期の抑うつ症状は世界的に増加しており、学業不振や不登校、将来の精神疾患、さらには自殺にもつながる深刻な健康問題だ。しかし、子ども自身が心の不調をうまく言葉にできなかったり、助けを求めることをためらったりするため、周りの大人が気付きにくいという課題があった。

一方で、抑うつ症状を抱える子どもは、頭痛や腹痛などの身体症状を伴うことが多いことが知られている。そこで研究グループは今回、これらの身体症状が、どのくらいの「数」や「頻度」で現れる場合に抑うつ症状と強く関連するのかを科学的に検証し、早期発見に役立つ指標を作ることを目的とした。

全国の10～15歳の小児2,268人を対象とした調査データをもとに分析

同研究は、全国の自治体から無作為に選ばれた10～15歳の小児2,268人を対象とした質問票調査のデータを用いて行われた。調査では、過去6か月以内における4種類の身体症状（頭痛、腹痛、背部痛、めまい）の経験頻度と、国際的に広く用いられている思春期用の質問票（PHQ-A）を用いて抑うつ症状の程度を評価。これらの情報を用いて、身体症状の「数」や「頻度」と抑うつ症状との関連を、統計学的に分析した。

複数の身体症状を月に1回以上訴える子の抑うつ症状リスク「高」、4つあると16.4倍

その結果、頭痛、腹痛、背部痛、めまいといった複数の身体症状を月に1回以上訴える子どもは、抑うつ症状を持つリスクが顕著に高いことが判明。さらに、症状が4つある場合のリスクは、症状がない子どもの16.4倍に達することが明らかになった。

身体の不調が心の健康状態を反映している可能性

また、抑うつ症状のある子どものうち約86％が、何らかの身体症状を月に1回以上経験していた。これは、身体の不調が心の健康状態を反映している可能性を示唆している。

子どもの訴える身体症状の数と頻度への着目が「心の不調」の早期発見につながる

今回の研究成果により、保護者や学校の先生、かかりつけ医などが、子どもの訴える身体症状の「数」と「頻度」に着目することで、その背景にあるかもしれない心の不調のサインを、より早期に捉える一助となる可能性が明らかになった。

「おなかが痛い、頭が痛いといった子どもの訴えが複数重なる場合、それは単なる体の問題だけでなく、心のつらさが隠れているサインかもしれない。本研究が、そうした子どもの状態に周りの大人が気付き、本人の話にじっくりと耳を傾けるきっかけになることを願っている」と、研究グループは述べている。（QLifePro編集部）