手首装着型デバイスで得られた歩行パラメータで、フレイルを判定
国立長寿医療研究センターは9月2日、UK Biobank studyに参加した約1万人のデータを用いて、手首装着型ウェアラブルデバイスによって判定されたフレイルが、中高年の入院・死亡リスクの予測に役立つ可能性を明らかにしたと発表した。この研究は、同センターフレイル研究部、Neuroscience Research AustraliaのFalls, Balance and Injury Research Centerの研究グループによるもの。研究成果は、「Age and Ageing」に掲載されている。

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ヒトの体は、年をとるにつれて、筋力や歩行速度の低下、疲れやすさなど、「フレイル」の症状が現れてくる。フレイルは要介護状態に移行する危険性が高い状態であるが、対策を講じればより長く自立した生活を送ることができるともいわれているため、その兆候をなるべく早期に捉えることが重要である。
現在、フレイルはアンケートや体力測定の結果に基づいて判定されるのが一般的だ。近年では、スマートウォッチなど、ウェアラブルデバイスに内蔵されたセンシング技術を活用して、より早期にかつ日常的にフレイルを判定する技術が注目されている。研究グループはこれまでに、手首装着型ウェアラブルデバイスから得られた7日間24時間の加速度データを用いてさまざまな歩行パラメータを生成。4つの歩行パラメータ(歩数、最大歩行速度、歩行の安定性、歩行中の腕の動作)からフレイルを判定できることを明らかにしている。
デバイス判定のフレイル、将来の入院・死亡のリスク予測は?英国の大規模研究データを解析
今回の研究は、英国の大規模観察研究「UK Biobank study」に参加した約1万人の中高年を対象に、手首装着型ウェアラブルデバイスによって判定されたフレイルが将来の入院や死亡のリスクを予測できるかを調べた。そして、その予測力が従来のフレイル評価法と比較して劣っていないかどうかについても調べた。
デバイス判定のフレイルは入院・死亡リスク「高」、従来の評価法に劣らず
解析の結果、ウェアラブルデバイスによってフレイルと判定された人は、そうでない人と比較して、入院や死亡のリスクが高いことが明らかになった。また、これらのイベントに対する予測力は、従来のフレイル評価法と比較しても劣らないことがわかった。
早期のフレイル発見で高齢者の健康寿命延伸に期待
以上の結果から、日常的に使用されるスマートウォッチなどを活用すれば、自宅にいながらでも自身のフレイルに関係する情報を連続してモニタリングし、早期に発見できる可能性が示された。今後、こうした技術が広く活用され、標準的な評価手法が確立されれば、早期のフレイル発見や介入によって、高齢者の健康寿命の延伸にもつながると期待される、と研究グループは述べている。
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・国立長寿医療研究センター プレスリリース


