パーキンソン病の診断・進行予測が可能なバイオマーカーが求められている
藤田医科大学は8月26日、脳脊髄液中のα-シヌクレイン凝集体がパーキンソン病の診断には有用である一方、その量や存在が病気の進行速度を予測する指標とはならないことを明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学部脳神経内科学の研究グループと、米国ハーバード大学のXiqun Chen博士の共同研究によるもの。研究成果は、「eBioMedicine」に掲載されている。
パーキンソン病は、進行性の神経変性疾患であり、診断および進行予測に有用なバイオマーカーの確立が急務とされている。特に、異常タンパク質α-シヌクレインの脳内での凝集が病態に深く関与すると考えられており、最近ではその「シーディング活性」を高感度に検出できるSAA(シード増幅アッセイ)が注目されている。
脳脊髄液中のα-シヌクレイン凝集体、診断には有用だが進行速度とは有意な相関なし
今回の研究では、パーキンソン病進行マーカー・イニシアチブ(PPMI)に参加する564人の大規模コホートデータを対象に、最大7年間にわたる追跡調査を行い、脳脊髄液中のα-シヌクレイン凝集体の測定結果を解析した。
その結果、多くの患者でα-シヌクレインのシーディング活性が検出され(LRRK2変異例を除く)、同凝集体の存在が診断指標として有用であることが確認された。しかし、測定時点でのα-シヌクレイン凝集体の有無や量は、運動機能や認知機能の低下速度、およびドパミントランスポーターイメージングの進行指標とは有意な相関を示さなかった。
長期的かつ複合的なバイオマーカー戦略の必要性が明らかに
今回の研究成果は、α-シヌクレインSAAの意義を否定するものではなく、むしろその限界を認識し、他のバイオマーカーとの多元的な統合や長期にわたる縦断的で包括的なモニタリングの必要性を示唆するものである。
「SAAは診断には非常に有効な手法だが、単回測定だけでは病気の将来の進行を予測するには不十分である可能性がある。パーキンソン病の不均一性と複雑性を正しく捉えるためには、今後も国際的な連携と多面的研究の推進が不可欠だ」と、研究グループは述べている。
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・藤田医科大学 プレスリリース


