医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 日本人の食事パターンを年齢・性別で「二次元可視化」することに成功-藤田医科大

日本人の食事パターンを年齢・性別で「二次元可視化」することに成功-藤田医科大

読了時間:約 3分27秒
2025年08月05日 AM09:10

α多様性・β多様性の解析を通じ、年齢層別・性別の食事パターンの違いを解明

藤田医科大学は7月14日、10品目からなる食事パターンの年齢や性別による違いを二次元で可視化することに成功したと発表した。この研究は、同大臨床栄養学講座 飯塚勝美教授と、健康管理部 成瀬寛之部長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Nutrients」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

個人の食事パターンを評価する際、これまでは10品目の食事の頻度を点数にして、合算する方法が取られてきた。簡便である反面、それぞれの食品の比率は無視せざるを得なかった。そこで研究グループは、生態系や腸内細菌叢の解析で使用される多様性を評価する指標に注目した。α多様性は個人の多様性を反映し、β多様性は異なるグループ間の多様性の違いを表す。

同研究では、20~59歳の男女2,743人を対象とした食品摂取頻度の調査結果に基づき、α多様性およびβ多様性の解析を通じて、若年および中年の日本人における年齢層別・性別の食事パターンの違いを明らかにすることを目的とした。まず、α多様性指標を用いて同一グループ内の食事摂取の多様性を評価し、年齢と性別の相互作用を評価した。次に、NMDS(非計量的多次元尺度構成法)を用いて全体の食事パターンの分布を可視化することを試みた。NMDSとは、数字では表しにくい“感覚の違い”を、地図のように描き出す技術のこと。すなわち、「似てる・違う」をもとに、似ている人や物を近くに、違うものを遠くに配置する「見える化」の方法だ。さらに、年齢と性別で調整したRDA(冗長性解析、「ある傾向が、どんな要因に影響されているか」を探るための手法)を実施し、10品目の食品がRDA軸に与える寄与を特定した。

年代が高く、女性ほどいろいろな種類の食品を食べていることが判明

まず、各年代の男性と女性におけるα多様性をシャノン指数として調べた。シャノン指数とは、“種類の多さ”と“バランスの良さ”の両方を考慮して、多様性を表現する手法だ。その結果、シャノン指数は年齢が上がるごとに男女ともに増加し、男女間の差は年齢が上がるにつれて縮小していることがわかった。つまり、年代が高く、女性ほどいろいろな種類の食品を食べていることが判明した。

個別の食品の摂取頻度で見られた傾向、「食事パターン」でも同様

次に、NMDS解析で、類似したデータ同士は近く、類似していないデータは遠くなるように、2次元の図に落とし込んだ。可視化された図からは、20代女性と30~50代女性、20~30代男性と40~50代男性、20代の男女、および30代の男女が互いに目立って離れていた。因果関係は不明だが、年齢と性別でグループ分けした場合、食事パターンが異なる可能性が考えられた。

さらに、RDA解析で年代・性別ごとの食事パターンの違いと、年齢・性別の寄与について調べた。RDA解析は、10品目(肉、魚、卵、大豆、乳製品、野菜、果物、海藻、芋、油脂)の摂取頻度からなる食事パターンと、年齢および性別のカテゴリーを組み合わせた解析手法。グループの重心とその95%信頼区間も示されており、食事パターンにおけるグループ間の違いや重なりが明示される。

結果、RDA1軸の寄与度は、男性および高齢者で高く、RDA2軸の寄与度は、女性および若年者で高いという結果になった。これはシャノン指数の結果と一致しており、同年齢層における男女間の距離は加齢とともに縮小した。

特に、肉と果物が食事パターンに与える影響「大」

次に、RDA1およびRDA2への食事の寄与について検討した。RDA1軸(寄与率70.1%)では、「肉」と「卵」が非常に強い負の寄与を示したのに対し、「果物」「海藻」「乳製品」は、中程度~強い正の寄与を示した。一方、RDA2軸(寄与率29.9%)では、「魚」が圧倒的に強い負の寄与を示し、「果物」「緑黄色野菜」「芋類」は強い正の寄与を示した。したがって、RDA1は「動物性食品中心(肉・卵)と果物・乳製品中心の食事パターン」の対立を強く反映していると解釈され、RDA2は「魚中心の食事パターン(果物・海藻・乳製品)」と「植物性食品中心の食事パターン(果物・芋類・野菜)」の軸とみなされた。肉・卵中心パターンと果物・海藻・乳製品中心パターンを反映するRDA1は、若年男性群で最も低く、高齢女性群で最も高い値を示した。一方、魚・脂質主導の食品(負の方向)と主に植物性食品中心の伝統的パターン(果物/芋/野菜、正の方向)を反映するRDA2は、高齢男性群で最も高く、若年女性群で最も低くなっていた。

このように食品群の中では、果物と肉がRDA軸に沿った食事パターンの分離に最も強く寄与していた。果物はRDA1とRDA2の両方で正の値を示し、肉はRDA1と強い負の関連を示していた。これらの方向性は年齢・性別群間で対立する食事傾向に対応している。

「年代・性別ごとの食事パターンの違い」を考慮した栄養指導が必要

今回の研究により、これまで食品摂取量の違いとして大まかに認識されてきた食事パターンの年齢および性別による差異が、統計的に明確に明らかにされた。年齢および性別を一致させた上で、糖尿病やがんなどの疾患を発症した人としていない人の食事パターンの比較も行うことで、疾患の発症予測にも活用できる可能性がある。

「まとめとして、日本人集団における食事パターンに関連する要因(年齢および性別)の役割を明らかにする上で、α多様性およびβ多様性の解析は有意義であると考えられた。栄養指導を行う際には、年齢や性別による食事パターンの違いを十分に考慮する必要がある」と、研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 重症心不全の回復予測因子を同定、IDH2/POSTN比が新たな指標に-東大ほか
  • 急変する環境での集団意思決定パフォーマンスを改善する仕組みを解明-東大ほか
  • コーヒーと腎機能の関係、遺伝的多型が影響の可能性-徳島大ほか
  • リンチ症候群、日本人の病的バリアント大規模解析で臨床的特徴が判明-理研ほか
  • 変形性膝関節症の高齢者、身体回転のイメージ形成が困難に-大阪公立大